ラップのズレになぜ心地よさを感じるのか?

最近、JAZZ DOMMUNISTERSとcharisma.comをよく聴いてる。

charisma.comの真っ当でリズムに合ったニヒルでガーリーな(と言うか実に女性的な)リリックと世界感も良いが、JAZZ DOMMUNISTERSのおふざけ感と菊地成孔の天性のリズムセンスと大谷能生の地につかない感じがなんとも言えない。

『BIRTH OF DOMMUNIST(ドミュニストの誕生)』JAZZ DOMMUNISTERS - Shop BEA-TONE (ベートーン)
「SHOW TIME JOE」と言う曲があって、この変則なズレが心地よい。
トラックの打ち込みリズムはかなりの変則で、菊地や大谷のリリック(歌詞)はこのトラックと合っていない。
いや、合っていないが合っている。
上のcharisma.com「HATE」がひとつのリズムをベースに作り上げているのに対し「SHOW TIME JOE」はリズムの方が変則的でリリックの方がリズムをとり、ズレてはいるがズレきっていない。

ロックやポップスなどの多くの場合はドラムやベースなどの基本のリズムに合わせて歌と音楽を聴く。リズム隊がブレたりすると、そこに違和感を感じるし美しさを感じない。
特にポップスの場合。




THA BLUE HERB - 未来は俺等の手の中 - YouTube

THA BLUE HERBに見られるようなラップの場合、リリックはトラックと乖離し、リリックのアジテーションこそがメインで、トラックはBGMと化している。
しかしただのアジテーションであればこの世界は成立せず、不可分なのは間違いない。

日本語とラップの相性の悪さと向井秀徳 - あざなえるなわのごとし
以前に書いたが向井の「TOKYO FREEZE」

この曲にあるように最初、リズムの合っていないリリックとリズムに途中から合わせるわけだが、だからと言って冒頭のリリックがズレているわけでも無く心地よく感じる。




定番“外山恒一”の演説とエレクトロニカオウテカスクエアプッシャーetc)などの相性の良さは言わずもがな。
同時に再生すればオウテカをBGMにアジテーションしているように思えるし、違和感がない。落語を合わせるのも相性が良い(特に枝雀師匠は素晴らしい)。
ズレているが、ズレていない。
アジテーションの場合、何かしらのリズムを感じ「二つの異なるリズム」の合わさりに心地よさを感じるのだと思う。
無機質なエレクトロニカと有機的なアジテーション。
「いちご大福」のような違和感ある合致。


このズレの心地よさはとても微妙なもので、ズレすぎては心地良さを感じない。
例えば一本の描線があったとして、それと並行して線を引く。
定規を当てれば同じ線がもう一本引けるし、それは整然と美しい。
手で書けば当然ぶれるが、そのブレに人間らしさが現れている。
しかし大きくその線がズレればバランスを破壊してしまう。

服は何故音楽を必要とするのか?―「ウォーキング・ミュージック」という存在しないジャンルに召還された音楽達について服は何故音楽を必要とするのか?―「ウォーキング・ミュージック」という存在しないジャンルに召還された音楽達について
菊地 成孔

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必読書 菊池成孔「服は何故音楽を必要とするのか?―「ウォーキング・ミュージック」という存在しないジャンルに召還された音楽達について」で語られている事なのだが、
さて、ズレ/揺らぎというワードが出てきました。これを説明します。このズレ/揺らぎというのは、音楽の理論でいう和声につながります。純正律と平均律です。


・平均律:すごい簡単にいうと、それぞれの音の周波数の比率が数学的に一致していること。机上では、これで音の周波数の幅が均等になるものとして一般化できると考えられる。 ピアノがその1例です。


純正律:完全5度を2:3、長3度を4:5に取って長音階を、完全5度を2:3、短3度を5:6に取って短音階を取る方法です。簡単にいうと、数学的な平均律とは異なり、ちょっとした音程のズレと揺らぎが、帰って人間に心地よい響き(倍音)をもたらすという理論です。クラシックコンサートなんか、この純正律を使うのが一般的です。


服と音楽の関係は、この「純正律」に関係しているということになります。ちょっとしたズレ/揺れこそが服が音楽を必要とする必然性につながるということ。エイゼンシュテインという博士の理論が基になっています


服はなぜ音楽を必要とするのか?-ズレ/揺らぎの関係性 | Brand Fashion Communication

倍音での二つのリズムのズレと合致。
その部分に心地良さが産まれる。
ベテラン歌手なんかが自分の繰り返し歌う歌に飽きてインプロバイゼーション的(即興)に歌い方にアレンジを入れたりするが(メロディの高低では無く、リズム変化での)、あれにしても歌詞の詰め込み方を注視して聴けばとても面白い。
上田正樹の「悲しい色やね」とかね。

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