シンプルでミニマルな断捨離ライフは本当に素晴らしいのか?

※お題記事

近「シンプルこそが素晴らしい」価値観が至上になっている。
原題は、物質文明に毒されている。
モノが多すぎる、情報が多すぎる。
だから物を捨ててシンプルに生きよう。

もちろん美の感覚に正解は無い。


建築家ミース・ファン・デル・ローエ

「Less is more.」(より少ないことは、より豊かなこと)


ミース・ファン・デル・ローエ - Wikipedia

と言う言葉を残していて、以降の建築に大きな影響を与えている。
シンプルでミニマルに、簡素で無駄がない。

またプロダクトデザイナーのディーター・ラムスは

良いデザインは革新的である。
良いデザインは製品を便利にする。
良いデザインは美しい。
良いデザインは製品を分かりやすくする。
良いデザインは慎み深い。
良いデザインは正直だ。
良いデザインは恒久的だ。
良いデザインは首尾一貫している。
良いデザインは環境に配慮する。
良いデザインは可能な限りデザインをしない。

ディーター・ラムス - Wikipedia

“「グッド・デザイン」の十か条”を残してる。
アップル製品も大きな影響を受けてるこの十ヶ条。しかしこれらは「居住のための外枠」「道具」についての話であって「生活」までこれに準じなくていい。

経年変化

http://www.flickr.com/photos/27834483@N00/4934268561
photo by dafyd

敷地に特徴となる自然があるのであれば、
住宅が敷地から成長しているかのようにし、環境と呼応するように形づくりなさい。
そのような自然がない場合は、自然が機会を与えられた場合に
どうなるであろうかを想定して、できるだけ静かに、本質的で、有機的にしなさい。

フランク・ロイド・ライト

るものをあるがままに。
ヒトもまた自然の一部であり、住まう家もまた一部。

「侘び・寂び(わび・さび)」と言う言葉がある。

侘(わび、侘びとも)とは、動詞「わぶ」の名詞形で、その意味は、形容詞「わびしい」から容易に理解されるように「立派な状態に対する劣った状態」となる。転じては「粗末な様子」、あるいは「簡素な様子」を意味している。もっと端的にいえば「貧しい様子」「貧乏」ということになろうか

(中略)

寂(さび、寂びとも)は動詞「さぶ」の名詞形で、本来は時間の経過によって劣化した様子(経年変化)を意味している。転じて漢字の「寂」が当てられ、人がいなくなって静かな状態を表すようになった。同様に金属の表面に現れた「さび」には、漢字の「錆」が当てられている


わび・さび - Wikipedia

人が生きれば変化する、衰えていく。
エントロピーの法則から逃れる事なく劣化しいずれ土に還る。

人間も家と言う“巣”を作りそこで暮らす動物の一つ。
生きているから汚れるし、生きているから朽ちて行く。
そこに美を感じるのが「侘び・寂び」

無機的な冷たさではなく、有機的で切ないはかなさ。
木のぬくもり、などという安っぽい感傷ではない。


骨董の古びた壺に歴史を感じたり、その作り手の意志や佇まいを感じる。
しかし長い年月を経て来たものが、床に落とすだけで簡単に壊れてしまう。
一瞬で。
そこにはかなさを感じる。


メゾン・マルタン・マルジェラのアクセサリーには素材に真鍮を使っているものが多い。

多くのアクセサリーは年月がたっても光り輝く貴金属素材を使っている。年月が経っても磨けば再び輝く。
マルジェラの真鍮と言う素材は「錆びたり汚れたりする」ことで、その指輪が経てきた年月や使っている人の個性がその指輪に表現される...いわゆる「味」というものをアクセサリーに落とし込もうとした。
生きてきた年月、その指輪がすごした年月もまた魅力であり、それが刻まれた指輪は輝いていなくてもそこに「美」は存在する。

偏り、歪み、傷、ヒビ、汚れ、染み。
使う人によって道具は変わるし、変わるからこそ同じモノでもそれぞれに個性が出る。人のシワや傷に味わいと生きた証があるように。


断捨離

http://www.flickr.com/photos/79079800@N00/5584945000
photo by Cooky Yoon

「出来るだけ簡素に清潔で美しく、出来るだけ少なく」が尊ぶ。
でもその美意識には、生き物らしさがない。

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生きていれば何かしら部屋はどこかしら歪み、ぶつけた傷は残ったりもする。
昔なら柱の傷を見れば子供が成長した跡がそこにあり、障子には継ぎはぎがあり、子供は箪笥にシールを貼付け、剥した跡が残ったりする。
定期的に畳を表裏ひっくり返し、なにかの染みが残ってたり、折り畳みのちゃぶ台は壁に立てかけるから角が削れてる。
そこに家族がいて、そこに汚したり傷つけたりした跡が残る。
それは恥じるものではない。
「時間」と「生活」の痕跡。
そこに誰かが生きた証の一つ。


今は、そういうものを否定して「綺麗、簡素」こそが至高。
無機質でシンプルで何もない部屋と効率的な生活。
暖かさじゃなく冷たさ、汚れじゃなく潔癖。
ゴチャゴチャしすぎだ!断捨離だ!断捨離だ!断捨離だ!
古くさくて「昭和」っぽくて嫌だ嫌だ。
傷?汚れ?ありえない。

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ロハス!、オーガニック!、シンプルライフ!。

スタイルに踊らされるのもいいが、何が本質なんだろうか。

本当にシンプルにして何か見えてるんだろうか?
疑問に思う。
かつてはモノに埋もれようとしても、モノ自体がなかった。
今はモノを捨てる事すら選択肢として許されてる贅沢。

キレイにしなければならない。
余計な要素を増やしてはならない。
金科玉条で自分で自分を縛って緊張感を持たなければならない生活。
不自然を自然とする不自然に感じる違和感。
モデルルームは見るにはキレイだが、そこに住むかどうかはまた別の話。


ロートレックが好きな人もいれば、クリムトとかウォーホル、ポロックの画が好きなやつもいる。
どれが正しいかなんて無いので、好みは人それぞれ。
http://www.flickr.com/photos/44124427374@N01/91547896
photo by ajschu
いいんじゃないかな。
ロハスってステキですよね☆
何も無い部屋でクラシックとかボサノヴァ聴きながら、オーガニックなスムージー飲んで、ヨガやって。
断捨離断捨離言ってりゃ自己満足に浸れる。
好きに生きて好きに死んでりゃいい。


でもね。自分が枯れてくると、段々と味わい深いものが好きになって来る。
そういうもの。

無機質な部屋になんて住みたくないわ。
(fade out...)


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