※5,300文字くらい、速読なら(多分)1分
photo by Walt Jabsco
お笑い界には、約10年毎に「エース」と言われる存在が出現した。何が常識なんだか、100以上もブクマが付いてるのに、みんな唯唯諾諾でこの増田へのマトモなツッコミがない違和感。これは業界内でも割と常識で、普段から使われている言葉でもある。
https://twitter.com/s_hakase/status/8555903607382016
定義は曖昧ながらも、主に以下。
・20代から活躍し続けており、ほぼ停滞期がない
・冠番組しか出ない
・テレビ、または映画でしか活動しない
この定義に照らすと、残念ながら、さまぁ~ず、雨上がり決死隊、くりいむしちゅー、ネプチューンなどは入らない。
具体的には、以下のような人たちだ。
(テレビ世代以降のタレントに限定し、落語家や噺家は含めないこととする)
比較的近い世代に固まることもあるが、おおよそ10年に一組は「エース」が出現する。
しかしナイナイ以降、このクラスの芸人は出ていない。
誰しもお笑い論なんざ片手間ってことですかね(増田をまともに読まないのか)。
※「テレビ世代以降のタレントに限定し、落語家や噺家は含めないこととする」で笑福亭松之助の弟子の明石家さんまが入ってる時点で(落語はやらないが)既に矛盾してる
定義の矛盾点
・テレビ、または映画でしか活動しないという定義をしておきながらコント55号(萩本欽一)とやすしきよしが入っている。
やすきよやコント55号が活躍した時代と言うのは舞台も同時に行われていて(舞台中継)必ずしも「テレビでしか活躍しない」いわゆるテレビタレントのみの活躍と言うのは無かった。演芸と言うものは元々舞台が存在しテレビはあくまでもサブに存在していた。
横山やすしが死去し、西川きよしや萩本欽一が司会役としてもてはやされ、舞台にピン芸人として上がらずテレビタレントと化したから「テレビ、または映画でしか活動しない」ように見えるだけの話。
・冠番組しか出ない
「冠の付いたレギュラー番組にのみ出ている」という意味であれば、例を挙げればきりがないが、全員がこの項目から外れる。
他番組にゲストとして出演することも当然あるし、逆にくりぃむや雨上がりらが外れている意味が分からない。
・20代から活躍し続けており、ほぼ停滞期がない
デビューした時から売れ続けている、という意味であればやすきよや明石家さんまは入らない。
ツービートにしろ漫才ブームが来たのはたけしが30代に入ってから。
この増田が何をもって「活躍し続けて」と定義しているのかは判らないが、雨上がりはNSC>デビュー>天然素材>関東進出、で今は全国区でアメトーークなどのレギュラーを持っているが、関西だけで言えばこの増田の言う「売れ続けている」中に入る。
千原兄弟にしてもデビュー直後から評価され続けているし、冠も持っていた。
さらに言えばタカアンドトシやロンブーらも考慮されて無い。
穴が多すぎてなんとも。
この増田主の視点は「東京のテレビに出演している=活躍=エース」という認識のみなんだろう。
「活躍」の意味
とんねるず、ダウンタウン、ナインティナインの特徴は何かと言えば「師匠がいない」と言うところに尽きる。※タモリの場合、お笑いではないが赤塚不二夫が師匠に相当する
とんねるずはスタタン*1出身、ダウンタウンはNSC出身*2。
NSC一期生には、ダウンタウン以外にもハイヒールやトミーズらもいる。
吉本のその後のお笑い芸人らは
弟子入り→下積み→デビュー
ではなく、
NSC入学→デビュー→下積み
と言う流れになっていて、かつての師弟制度自体がなくなり、関東のお笑い系事務所もこぞってこの「養成所方式」をやってる。
ウンナンだけは異色の経歴で、横浜放送映画専門学院から内海桂子・好江に弟子入り→マセキ芸能社に入り、スタタンに出ている。
舞台をあまり経験せずにテレビタレントとして活躍しているとんねるずらは、元々関東に舞台が少ないというのもあって(吉本は専用の舞台もあるわけだが)だからこそテレビを中心の活躍になる。
今ならブラマヨやフジワラ、チュートリアルらはテレビでも活躍するが営業や舞台にも出演している。
コント55号(萩本欽一)、横山やすし西川きよし、ビートたけし(ツービート)、タモリ、明石家さんま、とんねるず、ダウンタウン、ウッチャンナンチャン、ナインティナイン。
これらは
・横山やすし西川きよし、ビートたけし(ツービート)、明石家さんま、ウッチャンナンチャン、ナインティナイン。
・コント55号(萩本欽一)、タモリ、とんねるず、ダウンタウン。
こんな別け方もできる。
上は「漫才ブーム」「ひょうきん族」「とぶくすり」「めちゃイケ」など番組発やムーブメントの中、複数の同業者の中から頭角を現した組。
下は、ブームに関わらず単独で登場し、ブームを作り上げた組。
コント55号は唯一無二。
タモリもとんねるずもおニャン子などの番組でテレビタレントとして花開いた。
ダウンタウンは、漫才が評価を受け、司会として帯番組の司会に抜擢(四時ですよ~だ)。
その後、ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!が関東の深夜で放送され、そこから関東進出を果たした。
ほとんどの下積みなく売れ続けている、という意味で言えばダウンタウンの経歴は、この中でもかなりの異色と言える。
スターダムシステム
お笑いと言うムーブメントで見れば、舞台→テレビへ移行しつつある時代にコント55号は活躍し、関西のテレビ演芸・司会としてやすきよが活躍した。タモリは、テレビでの深夜のアングラなお笑いからお昼の顔になり、ツービートらは漫才ブームの中で頭角を現しそんな中始まった「オレたちひょうきん族」を切っ掛けにさんまらが登場。その後のテレビのお笑いを牽引する。
スター誕生と言う異色のシステムからとんねるずが出現し若者相手に「夕やけニャンニャン」を開始。
その頃関西ではダウンタウンが「四時ですよ~だ」を開始。
「師匠のいないお笑い芸人(とんねるずはタレントだが)」がこの後のスタンダードになる。
ダウンタウンの深夜番組「夢で逢えたら」を切っ掛けにウッチャンナンチャンが表舞台に。
深夜番組発でお笑い芸人を売り出す、というシステムに乗って「とぶくすり」からナインティナインが出てくる。
ここまで「お笑いのスターシステム」は順調に続いていた。
ところが次で途切れる。
何があったかといえば「ボキャブラ」「エンタの神さま」および「レッドカーペット」がこの次になる。
ボキャブラは数々のお笑い芸人に注目を当てたが、ネタでもトークでもなくあくまでも「単発ギャグのタレント」としての使い方しかしなかった。
「エンタの神さま」では「ブリッジ→ネタ→ブリッジ」という小梅太夫だとかゴー☆ジャスだとか、レッドカーペットも極端にネタを簡略化し、「長い一本のネタより短く手軽に笑えるものを」と言うスタイルの変化は、視聴率重視のテレビにとっては当然の思考だったろうが、この行為によって視聴者は「10分のネタで5回笑うより30秒/20回のネタで40回笑いたい」と質より数を重視した。
そして「はねるのトびら」の失敗によって、この「深夜発で若手芸人をブレイクさせる」システムも終わる。
タレントの必要性
増田主の視点の「エース」と呼ばれる方々はタレントとして評価が高い。それは現行、くりぃむしちゅーやおぎやはぎ、有吉や「バラエティの司会を安定して行える」タレントが担っている。
「どうして(テレビタレントの)エースが出て来ないのか?」といえば単純な話、上がつかえているから、としか言いようがない。
元々コント55号の時代は司会としてはアナウンサーらが担当していて、欽ちゃんのような存在は稀有だった。
ところが明石家さんまやとんねるず、ダウンタウンらが「お笑いの能力が高くタレントとしても上手い」傑物が登場した結果、バラエティの枠が埋まってしまった。評判も評価も安定しているし、よく判らない若手でばくちを打つよりも安定しているタレントに任せたい。
ビッグスリーはいまだにレギュラーを抱え、ダウンタウンもとんねるずも同じ。
残りはその後に続くボキャブラの世代が埋めてる。
そんな市場へ他の若手が出てきても代わるすべがない。
問題はテレビの次期「エース」などではなく、お笑いのムーブメントが起きるのが難しくなっているという部分にある。
お笑いのムーブメントをこれまで支えてきたのは若者であり、どのお笑いブームも全て若者が支えてきた。
お笑いは万人のものだが、お笑いブームは若者のもの。
ところが今の若者は数が減り、テレビを観ず、お笑いを求めない。
テレビタレント化したお笑いでは求心力がないし、舞台では限定される。
補:ムーブメントの立役者
増田主はすべてを並べているが、コント55号は舞台→テレビの過渡期において「テレビバラエティ」の基礎を確立した。やすきよのような旧来型の漫才は、舞台芸としては天才。
その漫才のテンポをアップテンポにしたのは中田カウスボタンであり、続く紳助竜介、B&Bにツービートだった。
お笑い芸人のテレビタレント化にタモリとさんまが果たした役割は大きい。
アップテンポな漫才をスローダウンさせ、シュールでアングラな笑いをメジャーにしたのはダウンタウン。
単なるタレントではなく「お笑い」と言う大きなテンポの変化で見れば
・コント55号(UP)→横山やすし・西川きよし(DOWN)→紳助竜介、ツービート(UP)→ダウンタウン(DOWN)
以降、大きく(全体の)流れを変えるお笑い芸人は出て来ていない。
まとめ
お笑いのブームにしろ結局は「みんなが観ている」共通知だからこそありえるわけで、インターネットでどれだけ面白いお笑いがあってもそれが老若男女に広がることはない。インターネットとテレビの敷居は比較するまでもない。10年に一度「エース」のタレントが(増田主曰く)出てくるそうだが、今のエースは有吉だろうし、有吉らが売れ続けている以上、他を求めるまでもない。
有吉より面白いタレントをテレビは求めていない。
ナイナイにしろナイナイが面白いのではなくスタッフが面白い。
VTRとテロップ中心の番組作りを始めた時、バラエティ番組はお笑い芸人ではなくその後ろのスタッフがお笑いを作り始めた。
だからこそ今は使いやすく器用なタレントが求められている。
それがバラエティ番組の寿命にどんな影響を与えているかは知らないけれど。
