ダンディな男のダンディなこだわりとお手軽なネットは合わない

成功する男のファッションの秘訣60――9割の人が間違ったスーツを着ている (講談社の実用BOOK)
ぼけーっとホテントリを眺めてたら「ネットで出来るオーダーメイド」みたいな記事があって「おススメっす!」みたいな中身にふへぇ、となりつつもコメントを見てるとこれが好感触らしく、しかしこういうバランス感覚の悪いものが果たして広がっていけるのかな、と思ったりする。
シャツなんざ鎌倉シャツで充分。


バランスの悪さ

仮にスーツで、図を作ってみたんだけれども
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あくまで概ねざっくりな概念図。
実際の値段帯は広いので。


こだわってフルオーダーすれば一着数十~百万円台。
店頭で採寸して、型紙から起こして仕上げるから高い。

予算的に楽なのはある程度決まってるセミ(イージー)オーダー。
既存の型紙を選んで、それから微調整したり補正したりパーツを選んだりもできる。

パターンオーダーは既存のジャケットなんかがあってそれを着てみて袖を詰めたり補正。

ブランドのつるしはお店に行くとつってある。
試着してみて合うのを買えばいいが、当然ブランドによって値段は異なる。


一番安いのは量販店のつるし。
スーツカンパニーだのなんだの。
ダイエー辺りで背抜きなら一万円でおつりがくる。


ネットでオーダーできます、というのはこだわりは少し強い。
値段は普通のそこらで売ってるモノよりは高いだろう。

しかしこれはなんだか気持が悪い。
なにが気持ち悪いかと言えば、「こだわり」と「手軽さ」という二律背反があって、それが気持ち悪いのだと思う。
こだわらないなら安いものでいい。
スーツだのシャツだの、結局は仕事着。

「趣味のアイテム」というのは概ね図の左上にジャンルされる。


多く他の会社の人と会うならこだわりも必要だが、だったらイージー、パターンオーダーすればいい。
麻布テーラーなら三万円台からスーツも作れる。
洋服の並木でも安く作れる。
お金があるなら新宿 伊勢丹メンズ漢(館)の四、五階に行けばいい。
新宿 伊勢丹メンズでオーダースーツ 作ってみる?

ブランドのつるしも値段は高く、デザインはすばらしいものが多い。
高級既製服。スーツのオートクチュールか。

ブランドの名前の分、値段が乗っかるので、無駄に高いことも多いですが。

こだわる理由

「なぜオーダーするのか?」といえばそれは
「自分にあったスーツが欲しいから」
「既成のスーツでは満足できないから」
「隅々までこだわりたい(趣味)から」

微調整して、隅々までこだわり、型紙から起こしてもらって自分だけの一着を作る。
ラペルの幅、素材、本切羽、お台場仕立て、センターベント。
んー、ラペル幅はちょっと持たせてわざとクラシックな感じでピークドにして、シルエットは少しボックスでちょっとだけ野暮ったい感じ。肩はコンケープトショルダーっすよねー、生地はハウンドトゥースで英国らしさを出したいなー……。

他人からすれば、ハッキリ言えば、どーでもいい。
お前のスーツの値段なんか知らんわ。
カレーうどん食いづらそうやな―、それ。

でも、その無駄な細部へのこだわりに価値を感じるから高い金を払ってスーツを仕立てる。
他人に伝わる必要もない。

だからこそ「フルオーダーならギーヴス・アンド・ホークスだぜ!」「ディージ&スキナーでサヴィルロウの伝統でしょ」「オレはテーラー&カッターだ!」などとそれなりに名の知れたテーラーのところへ出向き、話しながら採寸したり仔細相談してオーダーし、待つ間の数カ月、足元はこちらもビスポークで仕上げるか、エドワードグリーン辺りを買い込んで自己満足に浸りながら、時計はロレックスかなー、などとテレ東の「俺のダンディズム」を毎週欠かさずチェックするわけです。

俺のダンディズム #03「靴」 - YouTube
全身で百万越え、みたいな。
秒速で稼がないとおっつかない。

ところが、ネットで手軽にオーダーが、ってのはそういう「こだわり」の部分がすっ飛んでる。
バランスが悪い。

オーダーの経験がある方なら解ると思うのだけれど、店頭で「服にこだわりのある人間同士」で会話しながら一つのモノを作り上げるのが楽しい。
なにせ専門家だから詳しいし、その話を聞くだけでも面白い。
そこらへんの服屋の店員とは違いますからね、知識も経験も。


こだわるってのは手軽さと反対なんですよね。
お手軽だったら安くていい、こだわらない。
こだわるから高くてもいい、お手軽じゃなくていい。
反対に「お手軽」さなんてこだわりにはいらない。

ネットのオーダースーツもあるけど、やっぱ使う気にはならないなー。

オレのダンディズム

「俺のダンディズム」でも言ってましたが
「ダンディズムとは独りよがりとやせ我慢」
お手軽にネットで注文できて便利。そんなものにはこだわりもダンディズムもない。
面倒でも、ひとつひとつ自分の世界を構築するためにアイテムを揃える。
アイテムひとつひとつのバックボーンやこれまでの歴史やディテールに価値を感じる。
無駄で非効率的で独りよがりでもそれに対して対価を払う。


効率だとか費用対効果を考えれば、こだわりなんて無駄。

時計なんざ動けばいい、スーツなんてアオキで充分。
靴はダイエーでいいし、ネクタイもセールの福袋に入ってたやつ。
夏はジャケットも脱いでるから、たまにはシャツで贅沢してみるか―。
でもめんどくさいからネットで……お、これ安いな。
じゃあこれでオーダーしてみるか。

……だからバランスが悪い。
こういう「オーダーはよくわからないけどお手軽なら試そう」という二律背反に疑問を持たない人にだけウケるサービス。
ヒットはしないんだろうなぁ。

ちなみに

ちなみに次回の「俺のダンディズム」は靴だそうですが、トリッカーズ、オールデン、チャーチ(は微妙か)、ベルルッティ、エドワードグリーン、ジョンロブは鉄板として、あとはイタリア靴なんだろうと推測。
あの番組の掲げる「ダンディ」はジローラモみたいな「チョイ悪いおやじ」だからなぁ……。

マダムM「あなたに似合うダンディな靴はジョンロブのダブルモンクストラップよ!」
段田「おぉ!どこから見ても隙のない洗練されたフォルム。英国王室の気品を漂わせている!さすが英国王室御用達(ロイヤルワラント)!!!」
マ「あなた予算は?」
段「ご、五万円」
マ「は?」
段「は、は、八万」
マ「は?」
段「じ、じゅ、じゅううまんえん!!」
マ「そこにあるジョンロブは三十八万円よ」

――段田、崩れ落ちる


メンズファッションの教科書シリーズ vol.1 スーツの教科書(Gakken Mook Fashion Text Series)