「技の名前を叫ぶとすごいんだ」系作品の系譜

※ざっくりと
リングにかけろ1 菊と竜 (SHUEISHA JUMP REMIX)
超能力SFと、異能モノと、霊能力、スタンドの関係 - Togetterまとめ

この辺の能力者バトルをジャンル横断して語るとかなりめんどくさい話になるので、1977年の車田正美リングにかけろ」辺りからにしますが、ここで
「技の名前を叫ぶことでパンチがすごいことになってることを表現する」
と言う技法が出てくる。

名前を叫ぶことでそのパンチが他より特権・権威化する。
ギャラクティカマグナム!!」と叫ぶからこのパンチはすごいんだ、と読者に解る。
特別だからうんちくがある、こだわりがある、差別化されてる。

体術ではなくて気

DRAGON BALL STARTER BOOK 2 (ジャンプコミックスDIGITAL)
ドラゴンボールの「かめはめ波」「気円斬」「魔貫光殺砲」とかにも見られる、今ではありふれたそういう「気」という超常のパワーをベースにした技に名前をつける方法。

格闘技は本来、体術に名前をつける。
内股だの横四方固めだの裡門頂肘だの。
発剄の種類に名前をつけて叫ぶというドラゴンボール「技の名前を叫ぶことですごいことになってることを表現する」使い方は、どちらかと言えば格闘ではなく魔法に近い。
体術で名前が付いてるのって……「ジャン拳」「狼牙風風拳」「天空X字拳」「八手拳」とかですか。
体術に名前をつけてるキャラは基本、人間とか弱キャラが多い……。

リングにかけろ」はボクシングマンガなので、名前はあるけどなんだかんだどれもパンチなわけですが。

後半になるに従って「界王拳」だとか「元気玉」だとか、あるいは瞬間移動とか、ドラゴンボールのセカイでは、もはやただのグーパンチに名前をつけても特権化できないわけです。
「これが悟空拳だーーーーー!!」
なんて説得力がないし、ドラゴンボールでサブミッションや搦め手の技は特権化されない。

気も浸透剄だの発剄のように打撃に付与するわけでなく、光線として放つわけですから。
ビーム、熱線なわけです。
そりゃあ格闘を越えて超能力・魔法の域に達してる。



カムイ伝 飯綱落としの由来 Origin of Izuna Drop - YouTube
「術や技の名前を作中で出し、特権化する」構造って山田風太郎やマンガで言えば白土三平カムイ伝の「飯綱落とし」とか「変移抜刀霞斬り」辺りなのかな、と。
ただ忍者は技の名前を叫んだりもしないので影の声(ナレーター、講談師)が説明をする(そんな記憶が……)。
今の忍者は「影分身の術!」「螺旋丸!!」とか叫んでますけどね。
忍者なのに。
技仕掛ける前に叫ぶなよ、と。

魔法詠唱

ファンタジー作品の指輪物語ガンダルフは敵に向けて炎を放つとしても
「くらえ!ファイヤーボーール!!!」
とは言わない。
この辺りの「魔法の明確な名称と発動」というのはダンジョンズ&ドラゴンズ(1974年)辺りの影響ではないのかなーと勝手に思ってる。
日本独自のエンタメコンテンツ発展の中で呪文詠唱ではなく術名の明確さをとる。

TTRPGでGMに魔法の使用を申請する際に名称がある方が当然やりやすい。
ムアコックエルリックサーガでもエルリックは「アリオッチよ、アリオッチ、わが王アリオッチにこの血と魂を捧ぐ!」とか叫びながら戦うわけで、エルリックサーガのTTRPGでもそんな感じで明確に術の名前がなくて漠然と召喚したりできたはず(確か)。
ストームブリンガー (ハヤカワ文庫 SF―エルリック・サーガ (626))
BASTARD!!「爆霊地獄~ベノン~」「爆炎障壁~ガンズン=ロウ~」「暴凶餓飢地獄~エッド・ツェペリオン~」辺りではジョジョに繋がるバンド名の読みを技につける、という術名を実際動作からを乖離させる構造も見られる(術の効果は漢字で表現してる)。
BASTARD!!が1988年、ジョジョは87年にファントムブラッドが連載開始。
ラノベで言えば1989年 神坂一スレイヤーズ」での魔法「重破斬(ギガ・スレイブ)」辺りにそういう構造が見られる(ただしBASTARD!!と違って表記と読みの意味の乖離が小さい)。

もはや魔法の発動は念じることでも魔法陣でもなく術名の詠唱に短縮されてる。
確かに見た目に解りやすい。

ラノベ以前

ジュブナイルで考えると菊地秀行夢枕獏辺りは「技名を叫ぶ」というのはなくて、それより以前の白土三平的な描写を多く感じる。
キマイラ・吼に登場するフリードリッヒ・ボックは特殊な発剄を使いますが、あの「鬼剄」にしろそれを現場で言うわけではないし、戦ってる最中は「シュッ」「はひっ」「ふひゅ」とか、技名で特殊なのは餓狼伝に出てくる「虎王」くらいですかね。
グラップラー刃牙でもやってましたが。

それでも叫んだりはしない。
技のあとで「(これが)虎王よ…」というくらいのもので。

不完全なまとめ

今や当たり前になった「技の名前を叫ぶと普通の攻撃よりもすごい」という解りやすい文法は「キャプテン翼」「キン肉マン」など他ジャンプ系作品でも使われ、果ては包丁人味平で醤油を入れたカレーを「味平カレーだ!!」と言うことですら特権化して見せた。
もはやそれに慣らされて疑問すら持たないですけどね。


だから昨今「魔法科高校の劣等生」での「解説を加えることでお兄様TUEEEE!!」という構造は「技の名前を叫ぶとすごいんだ」系を遡って白土三平のころにやってた「理屈があればすごいのだ」を作中世界のキャラに言わせることで行っているので、旧来のどこかからナレーターが出てきて『説明しよう。この技のヒミツは……』というメタな作品構造と大差ないのですよ、と思うのだけれどもね。

誰かこのネタの総括記事書かないかな。
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