もしもゴブリンを兵糧攻めしたら?

いたずら妖精ゴブリンの仲間たち
だるい。

「冒険者」と言う仕事の依頼の多くは、モンスターを狩ること。
ありていに言えば「害獣駆除」。
あるいは、なんでも屋。
一応、法には従うが依頼があれば何でもやる。
家事の代行はやらないが、荒事なら大概引き受ける。






なんか疲れた。
酒飲んで娼館で一晩中パコって、体力も残ってないのに朝っぱらから元気の有り余ってる若造どもに「依頼が来たからオッサンも来てくれ。作戦会議だ」と連れ出され、今目の前で行われてるテーブルを囲んで作戦会議に強制参加。
それにオッサンと呼ぶな。
まだ31歳だ。



「……で、ウェンディはここでゴブリンに対応してくれ」
若くて爽やかなリーダーのナオトが地図を指さしながらいろいろ指示してる。
どーせ、オレは剣持って突っ込むだけだから、こうやって二日酔いでグロッキーな身体を椅子に座ったままダラけさせてても何も言わない。年長だし我ながら腕が立つってのもある。

まぁ、見た目うら若きエルフ(だから実際はババアだが)のウェンディは酒の匂いに顔をしかめてるが知ったことか。
恨むなら呼びにきたナオトを恨め。


それにしてもだるい。
ゴブリンの巣に突っ込むなんてめんどくさすぎるだろ。
さんざ働き、雀の涙の報酬をさらにパーティで五分割。

……なんとか楽する方法はねーもんか。

「なー、ナオト」
声をかけると若さ勇気全開でキラキラした目のナオトが応える。
ルックスだけならなうての人気吟遊詩人にでもなれそうだ。

「どうした?おっさん」
オッサンってのやめろよな……、このキラキラ目苦手だわ。

「ゴブリン、兵糧攻めにしたらどーだ?」
兵糧攻め?」
テーブルに乗っかった地図を見る。
この村近辺の地形が詳細書かれていて、そこにナオトが手書きでゴブリンの巣の位置にチェックをつけてる。
村人の目撃情報からゴブリンの配置や巡回時間を書きこんである細かさ。
ゴブリンの総数はおよそ10~20匹前後。
どうやらもともとあった洞窟を根城にしてるらしい。

「ゴブリンどもの巣になってる洞窟を塞いじまえばどーかって話だよ」
そうすりゃあわざわざ斬り合いをしなくて済む。
言うとナオトは
「んー、兵糧攻めか。でも入り口をどうやって塞ぐんだい?」
「そーだなー、とりあえず岩でも転がすとか……」
と言って気付いた。

【めんどくささ】
入り口をふさぐ岩を転がす>>>>斬り合い

……塞ぐ方がめんどくさいじゃねーか。

やばいな。
このアイデアが通ると岩転がしになっちまうのか。
しかもゴブリンの巣は小高い位置にある。
坂道を岩を押して登る……ヤバい、実にヤバい。
入り口を塞ぐでかさの岩を転がすなんて想像しただけで……。
とはいえ今さら「岩転がすとか大変そうだしやっぱやめた」とも言いにくい。

横で黙ってたソーサラーのジンダイが
「岩を転がす、と言っても近場に岩がないから転がしてこなきゃならない。巣の近くに巡回も監視もいるのだから、見つからないように近くまで岩を転がし、監視を倒し岩を巣の入り口を塞ぐのに使うというのが作戦になる。としてもこの洞窟が厳密に測量されているわけじゃないし、ゴブリンどもが穴を掘ってる可能性だって否定できない。出入り口がひとつとも限らない。もし他に出入り口があればその場合は折角の岩も無駄になるよね」
普段は、口ばっかりでめんどくさい頭でっかちのお坊ちゃまだが、こういう時に役立ってくれて助かる。
いやーよかったよかった。

するとその横にいたサムライの信綱が
「しかしゴブリンと斬り結ばなくて良い、と言う考えはよいのではないかな。なにも猪突猛進、正面から戦うばかりが冒険者ではなかろう」
「それも一理あるな……岩じゃなくて呪文で入り口を破壊するとか?」
ナオトが応える。

呪文ならソーサラーのジンダイだ。全員の視線が集まる。
「……先日のオーク狩りで強力な破壊魔法は使ってしまって、新たなスクロールを補充する資金が不足しているし、それにゴブリンの巣の辺りの岩盤が堅かったら魔法で破壊しきれないかもしれない。その場合、巣からゴブリンが次々出てくることになると思うんだが」
やはりこいつは、めんどくさい。
どっちにしろ魔法で塞ぐことはできねー、と。

他の方法はなんかねーか。

水攻め……河から水をどーやって引くのかって話か。
火攻め……いぶして急襲。ゴブリンの方が数は多いんだから、正面きって斬り合いなら展開できない巣の中の方がオレらに有利。巣の外に出す意味がない。
火攻め&罠……いぶして追い出し仕掛けた罠にはめる。仕掛ける時間で狩れるし、誘導失敗したときがヤバい。
毒霧攻め……そんな便利なものがあるなら欲しい。
爆薬攻め……そんな便利なものがあるなら欲しい。
飲み水にしびれ薬……そんな便利なものがあるなら欲しい。どこが水源だ?
弓矢を持って出入り口を見はる……待機してる間の報酬は誰が??
人を雇う……それはオレらだ。


「なんかさ、突っ込むほうが早くね?」
僧侶の割に無軌道バカのムドーがぶっちゃける。

とっととこなして次の仕事で稼ぐ。
日当が出るわけじゃねぇ。案件でなんぼだ。
日数がかかれば、それだけ他の仕事が受けられない、飯代も経費もかかる。
現に今すっからかんだ。

たかが貧乏な雇われ冒険者が、合理性を考えても、戦うのが一番楽だってのがオチ。

炭鉱で働いても、ホテルで掃除夫やっても構わないのに、この仕事を選んだのは
「剣を持って戦って金を稼いで生きる」
「身体を張って稼ぐのが楽」

そういう選択をした結果ここにいるわけだ。
それが楽だからこの仕事やってんだものなー(オレは)。

「……ってことで、オッサン悪いな」

ナオトがにこりと笑って言う。
あの歯を光らせる爽やかスマイルが苦手だ。

オレはちょっと残念っぽい感じを装って
「そ、そうだなー。ま、今度使えそうならやってみようや」
背もたれにだらけて座り直す。
ナオトは気にせずさっきの作戦の続きを始める。

巡回してるゴブリンをまず倒し、入り口の監視役をウェンディが正面の藪から弓矢で狙い横方向からオレと信綱、ナオトが突っ込む。
もし入り口から出てきたときの備えは、ジンダイの魔法とバカ僧侶のムドーがヘビーメイスを振りまわして突っ込む。


ま、順当だわな。
とりま出発まで時間があるから迎え酒でも飲むか。
立とうとする背中にナオトが

「オッサン、飲みすぎるなよ」

わかってるよ。
剣も振れないくらい酔うならこの仕事辞めるわ。

なんでTRPGでゴブリンを兵糧攻めしないの? - Togetterまとめ

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