パーティの「経費」を考える飲み会

ダンジョンズ&ドラゴンズ プレイヤーズ・ハンドブック第4版 (ダンジョンズ&ドラゴンズ基本ルールブック)
もしもゴブリンを兵糧攻めしたら? - あざなえるなわのごとし
※続き


だるい。

飲み会と言うのは始まりが一番楽しい。
特に今回、オーク狩りが順調に済んだおかげで懐も暖か、ダメージもなく、飲み会に突入した。
ウェンディは(エルフのクセに)疲れたから寝ると言って引っ込み、テーブルを囲んでオレ、ナオト、ジンダイ、信綱、ムドーという男くさいメンツが残った。

和やかに呑み始めてからしばらく経って、めんどくさいやつのめんどくさいスイッチが入った。


「なんらと~?!じゃああれか?パーティ内で収入格差をつけろっていう、のか??」
ナオトは酒が弱いのに好きで大概開始してすぐにエールをあおって倒れる。
今夜はなぜか真っ赤な顔のまま粘ってる。
ソーサラーのジンダイは一切呑めないので砂糖入りの水だか何だかよく解らないものを飲んでる。
「もちろん現状の5等分と言うのも正しいだろう。しかし魔法使いや僧侶などに比べて戦士や侍などはランニングコストが違う。仕事を受けるたびに呪文一発○○円*1という中でやりくりしてるが経費として計上してない。だからその経費分多く貰うのは当然だろう」

まー、言うとおりだ。
確かに正論だ。
今のところパーティ結成時に「んじゃ報酬は5等分で」と言うルールに基づいて報酬を別けてるわけだが、経費はそれぞれの収入から負担してる。

とはいえ、経費を認めろ、となるとこれがめんどくさい。
オレみたいなオッサン戦士は、いろいろなパーティを組んでは解散して見てきたが、この金の話で揉める。

「しかし前衛は直接、敵と斬り結ぶのでござるし、その分危険は後衛バックアップよりも多く怪我や死も多いのは当然。そういう危険に対する報酬もあるのではござらんかな」
サムライの信綱が口を開く。
こいつは呑んでるんだか呑んでないんだか見た目でわからない。
朝まで飲んでも潰れない……酒でも水でも同じだろ。

で、脳もそれなりに動いてるらしい。
ジンダイが何やらブツブツ言いだしたので、耳を塞いで考えてみる。


この「対価として明確に出せない危険料」が、前衛に対して支払われるのが当然だ、になってくるとこれがまためんどくさい。
今までの報酬の流れは

報酬→5等分(余りはリーダー預かり次回持ち越し)

で、ジンダイの言うのは

報酬→各人が経費計上し報酬から引く→報酬を5分割(前衛に対しての危険料追加)

になるんだがそうすると今度は最終的な報酬は目に見えて前衛の方が多くなる。
実際は、前衛にしろ備品や武器の手入れやなんやかんやあるので経費を言い出すならそれも考慮しなきゃならないうえにどこまでを経費として認めるのか、と言う話が浮上する。細かく計算したことはないが減価償却だの考え出すとそもそも個人裁量でやってるパーティーの場合お手盛りが多くて、要は魔法バンバン使って無能であれそれが経費として通らない理由にならず、治癒魔法は前衛の傷治療だからそれなりに認められるが補助魔法系になるとかなり難しいし、リーダーの裁量と判断でとなると現場でそれが運用できるかどうかも微妙になる。
事前に「今回は魔法○○発、回復魔法○○回まで」なんて予定が上手く行くわけもない。

ある程度資金をプールしておける中級クラスのパーティーならともかく、ギリギリの資金を回してる結成してそれほど経ってないこのパーティでそこは微妙だよなー。

正論ってのは正しい。
各人の主張は間違ってもないし正しい。
その正しさは単に「金を稼ぐための関係性」でしかないのなら論理や正論も通じる。
しかしパーティは金にできない「命を預け合う関係性」でもあり、各人のとっさの判断や感情でどうとでもなる。
そういう部分は数値に置き換えづらいし、性善説で信じあってなきゃあやってられない。
感情や状況ってもんは数字にするのが難しい。
すると妥協点の探り合いに突入するわけだ。

いわゆる保険だとか経費だとか。
そーいうものを、なーなーでやれば当然不満は出るだろうし、その不満を解消すれば今度は別のヤツの不満が出る。
でかい組織ならそういう明確にシステマティックな仕組みも必要かもしれないが、5人程度のパーティーだとどの程度まで線引きするか、かな。
ま、ジンダイの言う魔法はアリだろうが、事前相談要って話になるのか……(申請上げろってことね)。


などと長考しながら気づくとやけに静かだ。
ふと見ると信綱は黙ってつまみを食ってる。
ナオトは遂に潰れたらしくテーブルに突っ伏してる。
ジンダイは、と見てみるとこちらも潰れてる。首から上が真っ赤になって何やらうなってる。
その横のムドーと目が合った。
「ん?うるさいから砂糖水に酒入れといた」
GJ、ムドー。
地味な割にいい仕事しやがる。

こーいう話は酒の席でしても仕方がない。
明日、酔いが覚めてまた話せばいい。
そこで各人納得できる線引きをできればいいし、できないなら解散するだけ。


「すんませーん、エールもう一杯追加。あとキマイラの煮つけ追加で」
私の中の「正論」に関する考察 - 心がよろけそうなときに読むポンコツ日記
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*1:それっぽい貨幣をハメといてください