マンガと映画で学ぶ英米ロック、テクノ、ヒップホップ
音楽は「音を聴いて楽しむ」だけで充分なのだけれど、聴いているうちにその音楽の背景や歴史、繋がりや影響を知り、辿ったりもする。
すると音楽の「音」だけではない「知識」も増え、幅が広がりもする。
ロックからジャズへ、ジャズからラップへ。
そういった知識は、活字だけとは限らない。
映画やマンガで知ることもある。
そこで音楽~ロックやヒップホップなど~の知識を知ることができる作品を並べてみた。
【1950米】南武成「マンガで読むロックの歴史」(1950〜ロック全般)
ロックンロールの始まりからの歴史を描いたコミック。
作者は、韓国の方のようで。
そのせいなのかは知らないけれど、チャック・ベリー、ディラン、ビートルズ、ストーンズ、ザ・フー、ツェッペリン、ザッパ、ドアーズ、ベルベッツなどを描いて、急にジェネシス、ピンクフロイド、クリムゾンとそっち(プログレ)のほうに行って終わる。
その辺りからHM/HRに展開しても、グランジに展開しても、オアシス以前の英国に行ってもいいところですが、この本ではプログレ推し。
この急展開っぷりは「ロックの歴史 ※ただし後半プレグレ」と注意書きする方が親切かも知れない。
【1970米】映画「シュガーマン 奇跡に愛された男」
1970年代に現れ忽然と消えたSSWロドリゲス。
当時、売れることも無く話題にもならなかった。
そのレコードは海を渡って南アフリカへ。
反アパルトヘイトに活動する若者らはロドリゲスの歌を聴き、育った。
米国では誰も知らず、南アフリカでは誰もが知るロドリゲス。
注目を浴びて映画になるひとよりも消えていく人の方が多い。
この奇跡と呼びたい偶然の繋がりはなかなか泣かせる名作。
伝説のミュージシャンを捜す名作ドキュメンタリー「シュガーマン 奇跡に愛された男」 - あざなえるなわのごとし
【1969米】映画「ウッドストックがやってくる」(ウッドストックフェスティバル)
田舎の潰れそうなホテルを救うために開催地を探していた巨大フェスウッドストックを招へいする……というお話。
ウッドストックがテーマですからさぞやミュージシャンや演奏が、と思いきや演奏シーンはほとんどなくて、整備も準備もろくにできてない田舎にフェス目当てに山ほど人がやってくるとどれだけカオスな状況になるかをお客さんの視点ではなく、場所を提供している側の視点で描いた風変わりな作品。
映画「ウッドストックがやってくる!」を観た - あざなえるなわのごとし
【1970米国】Ed Piskor「ヒップホップ家系図」(ヒップホップ黎明期)
サンプリング文化の始まり、ストリートアート、ラップ、DJなどヒップホップ文化黎明期を描く第一巻。
ヒップホップの絵本 エド・ビスコー「ヒップホップ家系図」 - あざなえるなわのごとし
「ヒップホップ家系図」紹介音源 P36~P64 - あざなえるなわのごとし
【1970米国】映画「ライム&リーズン」(ヒップホップ黎明期~1996)
ブロックパーティから始まり2pacの死まで。
ヒップホップについてひとつひとつ丁寧に。
豪華なメンバーのインタビュー(Dr.Dre、ATCQ、ウータンなどなど)満載で描いたドキュメンタリー。
要素を丁寧に取り扱っているので、入門に向いている。
【1970米国】映画「アート・オブ・ラップ」(ヒップホップ黎明期~)
『アート・オブ・ラップ』予告編 - YouTube
ラッパーのアイス-Tが大物っぷりを発揮して、バンバータ、Drドレー、モスデフ、エミネム、スヌープなどなどのビッグネームなMC、DJにインタビューしフリースタイル(即興ラップ)を見せてくれるドキュメンタリー。
映画としては、あまり上手くない(残念)なのだけれど、エミネムやカニエ・ウェストのフリースタイルが見れるなどコンテンツ力が極めて高いので観る価値はある。
ラップを熱く語っているので系統や繋がりは見えたりも。
FLOORnet:#174 特集 THE ART OF RAP
【1970米国】David Blot & Mathias Cousin「マシーンズ・メロディ」(ハウス・テクノ)
こちらは7/18発売なので未見(予約済み)。
アマゾンの解説によると
クラブキッズだったダフト・パンクと夜な夜な踊り明かしていた古き盟友が、コミックで描き記すダンス・ミュージックの発展史──
ダフト・パンクのグラミー受賞はここに予言されていた!
あのディスコ/ハウスレジェンドが、マンガで登場!
これは面白そう。
未見だがフランキーナックルズ辺りの名前も出ているので70年代のハウス黎明期から描いている模様。
(週末には受け取るので記事は来週)
【1980英国】映画「24アワー・パーティー・ピープル」(マッドチェスター)
24 Hour Party People (2002) - HQ Trailer - YouTube
イギリス、マンチェスターで起こったインディーズレーベル ファクトリー・レコードを立ち上げたトニー・ウィルソンを中心とするマンチェスタームーブメント(マッドチェスター、おマンチェ)を描いた栄枯盛衰。
監督は、マイケル・ウィンターボトム。
芸術家が、会社経営するとろくなことにならない&ジャンキーってどーしよーもねーなー、と言うのが良くわかる。
ロキノン厨の今さら聞けないロック基礎教養 #3 マッドチェスター - あざなえるなわのごとし
同様の時期を扱ったドキュメンタリー「シャドウプレイヤーズ」もあるので一緒に見るとよく理解出来る。
【1980英国】映画「アップサイドダウン」(クリエイションレーベル)
1980年代、英国のインディーズロックシーンに登場したアランマッギーが仕掛けたインディーレーベル クリエイション。
そのドキュメンタリー。
マイブラのアルバム「ラブレス」の製作費で倒産しかけて、オアシスが大ヒットして倒産を免れた、なんてのは有名な話。
アラン・マッギーと言うとTOKYO ROCKSという黒歴史が……。
【1990英国】映画「リヴフォーエバー」(ブリットポップ)
ブルーカラー出身オアシスvsホワイトカラー出身ブラーの図式をマスコミが仕掛け勃発した英国バンドブーム。
当時の関係者などのインタビューを中心に描いた作品。
ジャーヴィス・コッカーの(フワフワした)インタビューが秀逸で印象的。
【2009米国】映画「アンヴィル!夢を諦めきれない男たち」(へヴィ―メタル)
人気が無くなってもそれでもメタルバンド「アンヴィル」をやめられないメンバーら。
彼らの挫折と葛藤と復帰を描くドキュメンタリー。
サマソニのライブに迎えられるところなんて結構グッときます。
いまどきのレコードレーベルの対応や売れてないバンドってのはどんなもんだとか、業界の光のあたらない部分がわかる。
実にせつない。
映画『アンヴィル!夢を諦めきれない男たち』観た - あざなえるなわのごとし
【2010世界】映画「メタル ヘッドバンガーズ・ジャーニー」(へヴィ―メタル)
「へヴィメタはなぜ嫌われるのか?」をテーマにメタルファンである監督がさまざまなメタルミュージシャンにインタビューを行った作品。
これまでの歴史や宗教やさまざまに細分化されたメタルの系統を追っていてメタルファンでなくても充分に見ごたえがある。
続編「グローバル・メタル」もある。
こちらは「メタル ヘッドバンガーズ・ジャーニー」が縦軸(メタルと言うもの)で掘り下げたのに対し、横軸で「どう世界に広がっているか?」がテーマの作品。
結構ヤバいのもいろいろ出てくる。
【映画】グローバル・メタル/2007カナダ - あざなえるなわのごとし
以上、取りこぼしも多くあるし、テクノ関係は特に。
「High Tech Soul」「313Techno」
グランジロックの「Hype!」
ピストルズの「ザ・グレイト・ロックンロール・スウィンドル」
マンチェスターでジョイディビの「Control」
ヒップホップカルチャーの中に入るストリートアートならバンクシーのフェイクドキュメンタリー「イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ」などなど。