サードウェーブ系男子とサードウェーブ系男子(笑)
最近、サードウェーブ系男子と言うワードをよく見かける。
先日もcakes.mu
こんな記事が。
嗤われつつも広がるサードウェーブ系と言うカルチャーとは何ぞや?と言うお話。
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aniram-czech.hatenablog.com
ひさびさにチェコ好きのひと。
残念ながらチェコ好きの人は音楽、ファッション面が弱いのでそちらの考察が少ない。
確かに(全盛期をリアルタイムで知らないのでよくわからない部分もありますが)パンクやヒッピーよりも、「サードウェーブ」はだいぶマイルドな印象はあります。そこに過激な主張があるようには思えません。だけど、佐久間さんのおっしゃるように「”サードウェーブ”はカウンターカルチャーではない」といい切ることはまだできないんじゃないかと私は思っていて、それはこの「サードウェーブ」という流れがまだ始まったばかりで、どこに着地しようとしているのかがよく見えないからです。文化って、後から振り返ることはできても、リアルタイムで考えるのはすごく難しいです。
ここでチェコさんは、パンクとヒッピーを引き合いに出すんだけれども、これらを並べると心地が悪い。
一部では知られてますが、サードウェーブ系は、原型が「シティボーイ」なので。
WE ARE CITYBOY'S
ファッション誌POPEYEは2012年編集方針を大幅転換。
祐真朋樹のハイブランド路線から、ストリートカルチャー及びアーカイブ、ライフスタイルを総括して打ち出す。
その看板が「シティボーイ」
キャップやニット帽、デカリュック、マニッシュ靴、スケートボード、自転車、スモールカフェ、 DIY......。本サイトでは既に何度となく、1990年代らしい「ストリートカルチャー」というトレンドのリバイバルの兆しをレポートしてきたが、今春夏はより大きなムーブメントとして注目を浴びそうだ。
そのキーワードともいえるのが今回注目したい「シティボーイ」である。50代以上の男性には、懐かしくも少し気恥ずかしさすら感じてしまう単語だが、実は今、彼らの子ども世代ともいえる90年代生まれの若者たちに支持されているのである。
この風潮に少なからず影響を与えているのは雑誌「POPEYE(ポパイ)」。
2012年6月号から「Magazine for City Boys」と創刊当初のコンセプ トを再び掲げ、大幅にリニューアルをした。
(中略)
分かる人にしか分からない限定商品や定番ブランド同士のコラボ商品などを好み、近年は紙媒体からネット媒体にシフト。デジタルガジェットへの関心が高い一方で、食べ物や住まい、メード・イン・ジャパンのご当地ものへの関心も高い。編集部ではそんな彼らを、「ライフスタイル>ファッション」という消費行動の特性から「ライフスタイル系」と命名している。
キャップやニット帽にリュック、自転車、カフェ、どこぞで聞き覚えのある単語がズラズラ出てくる。
なぜサードウェーブ系「男子」なのかといえば、POPEYEが男性誌だから。
パンクやヒッピーは、性別を問わないけれど。
雑誌POPEYEが「シティボーイ」を掲げ、それに影響された若者らがテンプレと化し、ファッションクラスタの一部で「ライフスタイル系」と呼び、随分以前からあったのに今さらその姿を辛酸なめ子が気づき、そこから世間で認知され「サードウェーブ系」と呼ばれ広まった。
カウンターカルチャーと言う意味では「大量消費」に対する「反大量消費」「品質重視」ではあるんだけど、パンクやヒッピーと大きく違うのはそれがファッション誌発の90年代ファッションカルチャーのリイシューであるが故にファッション以外のイデオロギーが伴わない。
音楽には、カルチャーの持つイデオロギーを具象化する効能もある。
パンクには当時の英国の不況、ヒッピーにはベトナム戦争。
でもサードウェーブ系は単に90年代ファッションの再発。
そこに音楽が乗らない、なので具象化すべきイデオロギーもない。
イデオロギーより徹底探索消費・こだわり価値を求めるライフスタイル。
(今やロックよりアイドルがブームと言うのも大きいかもしれない)
ノームコアの失敗とサードウェーブ系
サードウェーブ、ヒップな生活革命、上質な暮らし、新しき村、マンションポエム、シロガネーゼ、スローライフ、中央線系、おいしい生活、ヤマギシズム、ノマド、ヒルズ族、田舎暮らし、ニュータウン、イーハトーブ…
— しかはん (@shikahan) 2015, 4月 17
もう下火になりつつあるけれども、ノームコアと言うファッションスタイルが一時期あった。
シンプルでありながら、こだわりのあるアイテムで全身を揃える。
大量消費へのカウンター。ファッションと言う存在に対するカウンターも含む。
ただしその差分が、アイテムのコンテクストだったがために広まらず、例えば全身こだわりのアイテムだろうが全身サカゼンだろうが、コンテクストを共有しているひとにしか通じない、見ても解らない、差分がない。
一般に普及するにはテンプレートが必要なのにノームコアの
「一見普通なのにこだわったアイテム」
という指定は、ファッションにそれほど興味のないひとには難しいし、明確なテクストもない。
だからこそノームコアは普及しなかった。
「マイルドヤンキー(笑)」って呼ばれないように必死で逃げてたら今度は「ライフスタイル(笑)」が迫ってくる
— kimijima kumi (@image_jpeg) 2015, 4月 13
そしてライフスタイルを中心として断捨離だのミニマリストだのフランス人は服を十着しか持ってないだのの「反消費」が流行るのは、日本はバブル時代から失速し長い不況に突入し、国力を失い、しかしファストファッションなどによりモノがインフレし価値を落とし、資本の交換先がモノからコトへ移行した。
モノが豊かに溢れているけれど、精神的に満たされない。
だからこういう禅宗のごとき極端なスタイルへと至る。
ノームコア、
ミニマリスト、
共通する「量より質」の思想。
最近の流れから、サードウェーブ系に行きつくのも自然な流れ。
サードウェーブ系男子()の陳腐化
名前をつけてテンプレ化されることでヒップだと思っていた価値観が陳腐化してしまう。
サブカルのマウントのとりあい。
結果わかりやすく揶揄するためのツールとして「サードウェーブ系男子(笑)」と言うワードが造られた。
(「意識が高い(笑)」のエッセンスが混入)
シティボーイだって充分ダサかったんだけど、ダサさを許容する=ヒップだ!の筈だった。
NBの「一見ダサいがこだわりがある」構造が、そんな思想を象徴してる。
今や、ある記事では「今モテるサードウェーブ系男子って?!」と書かれ、あるところでは「プギャー!ニューバランスにクロップドパンツだぜ!サードウェーブ系男子だ(笑)」のダブルミーニングが同時存在する現状が起きてる。
サードウェーブ系の何がダサいのか?と言われればそれは「薄っぺらいテンプレートをなぞってるから」「流行に左右されるから」という答えしかなく、でもそれを嗤うお前は何だ?と言われりゃあそこに何があるのか?と聞かれても特にない。
代案に「これがイケてる」を打ちだすわけでもない。
別に今、ニューバランス履いててもいい、好きに生きりゃあいい。
好きなら履けばいいし、嫌なら履かなきゃいいし。
コーヒー飲みたいならブルーボトルだろうがセブンイレブンだろうが。
一部のサブカルを嗤いたいサブカルによる観測範囲の狭い決めつけで、ガヤガヤやってるだけの気が……。
渋谷のHUB行ったら、黒ビールにフィッシュ・アンド・チップス摘みながら、こんな話して嗤ってる仕事終わりのアパレル関係者がウジャウジャいますわ。
果たしてチェコ好きのひとが深く考察する価値のあるような、そんなに考える深さのあるカルチャーなのかしら。
当事者にはカウンターと呼べるほど確固とした意識は無いんじゃないかね。
売り手からすれば、コンテクストの無い薄利多売なファストファッションへのアンチ、付録としてコンテクストが付いてる商売としてのムーブメント。
業界の景気が悪いだなんだ言われてる中、こう言うひとつのスタイルが出てくるのは、いい流れではあるんですけれども。
とりま男性誌コーナーでPOPEYEとかcasaとかBRUTUSとか読んだら「豊かな暮らし」みたいなテンプレートがゴロゴロしてるので、もし考察するならどうぞ。
サードウェーブ系ねぇ……。
サブカルを語る者は、その過程で自らがサブカルと化さぬよう心せよ。
おまえが長くサードウェーブ系を嗤うならば、サードウェーブ系もまた等しくおまえを見返すのだ
詠み人知らず
と思ってたので書くつもりもなかったんだけど、どこぞに「アップを始めた」と書かれてたので書いてみた。
はぁ。もう「サードウェーブ系男子」の話を拡げるのやめてくれないかな。
適当な名前付けて嘲笑するような低レベルな会話は飲み屋でやってくれ。迷惑だ。
— 松下 浩之 (@hirmat) 2015, 4月 17
辛酸なめ子が言う分にはいいんだよ。
あれが芸風なんだから。
ユーモアで風刺するのは品がある。
— 松下 浩之 (@hirmat) 2015, 4月 17
「ヒップな生活革命」と「反逆の神話」読んで「何か判った気になってる」だけでしょ、あの人たち。
遠い立ち位置からプゲラしてるだけの傍観者。何も変える気はない。責任を負う気などない。
— 松下 浩之 (@hirmat) 2015, 4月 17
「じゃあ本当に素晴らしいお店つくってみろよ」などと、そこの当事者になれとは言わない。
せめてメディア人ならPOPEYEやBRUTUSよりイケてるメディア作って若者を導いてやれ。
その覚悟がないのに「(笑)」とか言ってるの死ぬほどカッコ悪い。
— 松下 浩之 (@hirmat) 2015, 4月 17
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