しまむらのハーケンクロイツ話。
ナチスの象徴ハーケンクロイツ付きタンクトップがしまむらに売ってた、と。
でそれを見つけたひとがネットに上げ、燃え、販売中止、と←イマココ!
@S_Nelkin @S_Nelkin なら、日本の国旗もだめだね
その日の丸をかかげてアジアの人殺しまくってんだから。
酷いから使うな?でも、実際使ったからって法的罰は受けないし、憲法で自由が認められている。
そのマークを使って誰かに迷惑けけるわけじゃない。
ちゃんと勉強しろ
— 鴉のかーくん (@karasu3191) 2015, 8月 19
まずこの「日本国旗もダメだろ」はおかしい。
ハーケンクロイツは、ナチスドイツの象徴であって国旗とは違う。
そもそも今回は国でダメと言ってないとか自由だとかそういうことを言ってるわけじゃあない。
何言ってんの?
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商売とナショナリズム
地蔵さんのまとめ。
コメ欄が本番なんだが、togetter.com
ポリコレ信者はそういう「商売として、利益を上げるために何が適切か」という理屈と、「売れる売れないに関わらず、倫理上駄目なもんは駄目」という理屈のどっちに立脚してものを言ってるのかが分からん。時と場合で都合よく使い分けてるようにしか思えん。
黒屋ぶるー @kuroya_blue
この辺のコメントがバランス的にはいいのかな、と。
物事を考えるときは、視点を複数想定する。
まず商売的判断(売り手視点)の軸から。
しまむらからすればこれもデザインのひとつだった。
単に商売の道具でしかないしイデオロギーに基づくものではない。
ファストファッションのデザインは、下請けにまるっと投げたり、デザインチームが出したデザインのひとつを使う。
その辺りが、個人のセンスとデザインに依るデザイナーズブランドとは違う。
少なくとも会社の名前を背負ってデザインを出す以上、ナショナリズムやイデオロギーや歴史的な背景を背負うような象徴を採用するのはまずいわけで、過去にアニメ「さくら荘のペットな彼女」で原作と違うサムゲタンが出た→炎上、というものもあったが、アレにしろ仮に嫌韓の中でサムゲタンが出たから燃えたのであって仮に出てきたのがボルシチだったら一部のアニオタが「原作と違うじゃねーかー!」で背後にあるナショナリズムとは結び付けなかったろう。
仮にしまむらが
「ハーケンクロイツを使うのは当社の自由だ!禁止されてない!」
と主張したとして、なにか企業として得があるか?
そのままヒトラー柄Tシャツとかそういう路線に進みたいならわからなくもないが。
年間売上高が5,000億を越える企業がやることじゃあない。
個人の主義主張とは異なる。
ただのファストファッションブランドが偏ったイデオロギーに関わる意味は全くない。
しまむらとすればハーケンクロイツだろうが、北朝鮮国旗柄だろうがサムゲタン柄だろうがクレームがあれば下げるし、本来仕入れの担当が通すべきじゃなかった。
そもそも不勉強すぎる。www3.nhk.or.jp
しまむらが販売していたのは、タンクトップと「かぎ十字」のマークが入ったペンダントがセットになった商品です。
(中略)
これについて、しまむらは「商品が販売に適さない可能性があると判断し、中止を決めた」としています。
自分が着ることと、店、企業として売ることとはまったく異なる。
その視点も無いのはかなりおかしい。
ファッションとナショナリズム
次は、自分が着る視点。
こちらの連ツイがバランスいい。
紋章、エンブレム、マークといったものが「なにか」を象徴するとき、「そのデザインはそれが象徴するものからは実は切り離されている」ということにはならない。それが象徴というものです。ここらへん、ちょいと甘く見すぎている。さっきの人もね。
— こなたま(CV:渡辺久美子) (@MyoyoShinnyo) 2015, 8月 20
ナチスのハーケンクロイツと断定されるものを掲げる場合、それはそこに象徴されるナチス、ナチズムを掲げているということ。ヘタすると信奉しているということになりかねない。だから、それをやる場合は、「これは研究目的」とか「物語の演出上必要」とか、一定の理論武装が必要なの。
— こなたま(CV:渡辺久美子) (@MyoyoShinnyo) 2015, 8月 20
平野耕太の「ヘルシング」には、ハーケンクロイツはおろかナチナチしいものがいっぱい出てくる。でもあれは別にかめへん。なぜならそこには、「南米に逃れていて吸血鬼化したスゴイヤバイナチスの残党」を表現する演出としてそれが必要だ、という説明があるから。
— こなたま(CV:渡辺久美子) (@MyoyoShinnyo) 2015, 8月 20
がその一方で、ヨーロッパで発行されている「ヘルシング」の単行本は、ハーケンクロイツが改変されて田んぼの田みたいになってる。それは法的なイザコザを回避するのと同時に「あのマークで不快感を催す消費者が多いので、商売的な判断でそうしてる」というのもある。それはものの善悪とは別枠だな。
— こなたま(CV:渡辺久美子) (@MyoyoShinnyo) 2015, 8月 20
http://www3.schnittberichte.com/www/SBs/3078/bearbeitetbild1.jpg
昔から、ナチスのハーケンクロイツを軍装で用いたりする人々の間では「純粋にデザインが気に入ってるから着てるんだ」という理論武装がまかりとおってるのだがそれは通らん。それが「象徴する意味」を理解しているのか、それに対してどういうスタンスなのかが解らんからね。でも通ると思われてるんだよ
— こなたま(CV:渡辺久美子) (@MyoyoShinnyo) 2015, 8月 20
着れますよ。日本ではナチスの服を。でもそれは、「力づくで強制的に服を変えさせられない」というだけの話であって、「こいつデザインが純粋に好きとか言ってるけどナチスの何が悪いか解ってないんじゃ?」という疑念を受け、そこから生まれるあらゆるリスクをかわせる理由には全くならないのだ。
— こなたま(CV:渡辺久美子) (@MyoyoShinnyo) 2015, 8月 20
以前、映画「マルコムX」が流行ったころ、Xロゴのキャップを被ってたらゴツイ黒人に胸倉掴まれて「お前はそのロゴの意味をわかって被ってるのか?!」とボコられたなんて話もある。
だから着るのは自由ですよ。
別に禁止されてるわけじゃあない。
全身ドイツの軍服着て街中歩くのは勝手ですがドイツ人にアップかまされてもそれは仕方ない。
それを着るということが、自分としては単なるデザインだという主張であれ、相手からすればそれがナショナリズムと結びつけ捉えられる可能性は避けられない。
ファッションはコミュニケーションツールですので。
ハーケンクロイツを部屋の中に掲げるのは、自由だし、好きにすればいい。
誰かが見るわけじゃないし、来た友だちに聞かれれば説明すればすむ。
納得するかは知らん。
「ハーケンクロイツとナショナリズムを未だに結び付けるなんてバカバカしい」
その主張は自分にとって正当でも他人に通じるとは限らない。
その意見にはファッションが果たして何のためのツールなのか、という視点が感じられない。
他者との関係性が感じられない意見。
BOY LONDONとパンク
【しまむら:ハーケンクロイツ問題】
まあ確かに問題なのは間違いないです。が、「カギ十字さえ無ければよい」という面を逆手にとってアピールする、下記の如き第三帝国礼賛デザイン商品が野放しになっている事実を忘れてはいけません。困ったもんだ。 pic.twitter.com/q8VrHh3QnI
— マライ・メントライン@NHKドイツ語講座 (@marei_de_pon) 2015, 8月 20
英国ブランドBOY LONDONは1977年からある老舗ブランドで一時期消え、2012年に復活した。
セディショナリーズとライバル関係のようなパンキッシュブランドなのでアナーキズム(のスタイル)を掲げてる。
第三帝国礼賛ではないんですね、これが。
とはいえ当然、過去には問題になった歴史がある。
70年代にヴィヴィアン・ウエストウッドのブランド「セディショナリーズ」がナチスのシンボルであるハーケンクロイツを取り入れたシャツ、Tシャツを売り始めたのをきっかけに、欧米のパンクスの間でハーケンクロイツをファッションに取り入れる者が現れた。
しかしファシズムやナチズムの称賛が禁止されている欧米ではのちにこの事が問題になり、一般人の中にはパンクファッションの若者とネオナチとを同一視する者が現れ、中にはその偏見を持ったままパンクファッションを始めたネオナチの若者も現れた。
しかし1981年にアメリカのパンクバンドデッド・ケネディーズが「Nazi Punks Fuck Off!」という曲をリリースしたのをきっかけに、多くのパンクスの間でナチスのシンボルを取り入れるのはパンク的ではないと思うようになり、ハーケンクロイツをファッションに取り入れるのをやめるようになった(しかしこの曲は反ナチや反ファシズムを謳っているわけではなく当時の体育会系ハードコア・パンクスをナチや軍隊のようだと揶揄した曲である)。
さらにそのムーブメントを作ったセディショナリーズはハーケンクロイツを取り入れたファッションを販売するのをやめたので、現在欧米ではハーケンクロイツを取り入れたパンクファッションは販売されていない(しかしファシズムやナチズムの称賛が禁止されていない日本では、未だにハーケンクロイツがついているセディショナリーズのTシャツが売られている)。
パンク・ファッション - Wikipedia
BOY LONDONの場合、モロではないから海外でも禁止されてない。
象徴としてこういう鷲ロゴを使っているが、これにしろ二次大戦を経験したユダヤ人のお婆さんが杖を片手に殴りかかってくるかもしれない。
パンクは社会から差別されてなんぼ。
吐き気がして、みんな嫌いなのがパンク。
なのでこういう物でも身につける。
英国で女王に中指付き立てるのがパンクなのですよ。
パンクなデザイナー 故アレキサンダー・マックイーンは、王太子のジャケットの裏に卑猥な言葉を書きこんだなんてこともありましたっけ。
ザ・ブルーハーツ 1986.11.27 豊島公会堂 6 パンクロック - YouTube
意味性を持つ象徴か、それとも上皮だけのデザインなのかは紙一重。
BOY LONDONの場合は売り手側がパンクで、意識したうえでアナーキズム(というスタイル)を強調するためにこのロゴを使ってる。
しまむらとはまったく違うんですよね。
しまむらは(多分)無知から、BOY LONDONは明確にそれなりの(スタイルだけとはいえ)意図が存在する。
![]() BOY LONDON【ボーイロンドン】×【LONG CLOTHING】ロック パンク ファッション ユニセックス BO... |
「わたしはヒトラーを信仰してます」というロゴのシャツがあったとして、それを着るのは勝手だけどもそれを見た相手に絡まれたときに「いや、オレはこのロゴのデザインが好きなので書いてある意味は知らない」が通じるのかって話。
倫理的に―、日本は自由で―、そんなことを言い出したらー。
どうぞどうぞ。
そう思う方は自由にすればいいんじゃないでしょうか。
おまそうが誰にも通じると思うならそれもまた自由。
しまむらに関しては担当がザルということで、とりま減給とか。
社会ってのは価値観のすりわせで、中でもファッションというのはその関係性の間に入る。
だから自分が好きで持つのと、ひとから見るのは一致しないと思えないのはなかなかこわい。自分が○○だから正しい、じゃなく自分にとっては○○だが相手からすれば××だ。で、そのときどうするかって言う話。
オリンピックで海外から来る人間も増えると思うんですが、こういう感覚の欠如っていろいろありそうだなぁ。