電子書籍が普及しないのは当たり前のこと
gendai.ismedia.jp
日本より先を行くアメリカで、電子書籍の勢いが落ちているという記事。
アメリカと日本の事情は随分と違う。
だから同じとは言えないけれど。
電子書籍をしょっちゅうポチり、読むのが追い付かずひたすら電子積読を増やしている身としては、かなり温度感が違うんだが、そんなヘヴィー目のユーザーから現実を見ても電子書籍の未来はそれほど明るいとは感じない。
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【目次】
かまいたちの夜
先日話題になったが、電子書籍ではグラビアがくり抜かれたりする。
ジャニーズはその辺厳しく昔からそうなので、スクラッチみたいにどれだけ塗り潰されていても「いつものこと」だが、先日は佐々木希のセクシーグラビアということで広く話題になった。
ジャニーズ事務所はウェブに所属タレントの写真を掲載させないという方針をとっており、その余波がデジタルコンテンツである電子書籍にまで影響を与えている。
『セブンティーン』7月号を読み進めていくと、その広告だけでなく数々のジャニーズタレントの塗りつぶしページを見つけることができた。まるでゲーム『かまいたちの夜』状態。ジャニーズ目的で購入した人には発狂物である。
女性誌『セブンティーン』の電子書籍版に異変! ジャニーズのカットがすべて塗りつぶされている ここまで徹底するか? | ガジェット通信
遅配
小玉ユキの「月影ベイベ」を読んでいる。
最新刊は5巻。
え?6巻だろ!って?
いや、電子書籍の最新刊は5巻なので間違ってない。
9/10発売の6巻は、現在未電書化。
小学館 (2015-09-10)
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いつ出るかわからない。
最近は同時発売の作品も増えたが、やはり遅れて電書化されるものも多い。
忘れたころに電子書籍化される。
紙の本は4/22、電子書籍は10/2
ほぼ半年遅れ。
なのに文庫本価格ってわけでもない。
電子書籍になってない既発作品も山ほどある。
同発にしろ紙の本ならフラゲで手に入るのに、電子書籍はまだだから店頭スルーだってしょっちゅう。
掟上今日子なんて書店で表紙だけ見て、翌日DLして買うことになる。
未対応
講談社 (2015-09-17)
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作家によっては電子書籍化に対し抵抗感があったり、許可しない作家も多い。
森川ジョージ、浦沢直樹、井上雄彦など、一部作家の作品は電子書籍化されていない。
僕は作品を1回も電子書籍化したことがないんですよ。紙媒体だけでやっている残り少ない原始人(笑)は、もう本当に、数えるほどという感じ。なぜやらないのかというと、第一に画面の小さいスマホで読んでほしくない。それと、漫画って見開きで読む形態なので、それがキープできない媒体では、見てほしくないんですよ。見開きの状態で眼がどういう風にページ全体を追っていくのかが漫画の演出だと思うので。ただそれだけなんですよ。
「読者がお金を払わなければ、"あるべき関係性"が結べない」――漫画家・浦沢直樹さんインタビュー
優れた小説家は行間にも想いを込める。漫画も然り。僕の拙い解析だと男性の漫画のコマ間には時間の流れ、女性のものには感情の流れがある。全てではないがこの傾向が強いと思う。つまりコマ間も何らかのもので埋まっている。データ化されて電子で読むと、それが極めて薄まって見える。→
— 森川ジョージ (@WANPOWANWAN) 2015, 8月 9
→紙に印刷されることを前提で描いたものだから電子に移植されたら当然、微妙に差は出る。これが積み重なって大きなものになる。縦、横スクロール、どちらにせよコマ間の問題は課題だ。きっとボーンデジタルの作家達が解決してくれるだろう。それを見た時、もしかしたら勉強したくなるかもしれない。
— 森川ジョージ (@WANPOWANWAN) 2015, 8月 9
井上雄彦作品が電子書籍化したら一気買いするんだけどねぇ(無理筋)。
チープ
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さらにアマゾンでよく見かける
※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。
この表示の場合、電子書籍の利点である検索などが一切使えないし、文字の大きさも変えられない。
先日買ったナタリーの文章術本はこの形式だった。
図版が多いものなどはこういう形式にならざるを得ないが、それなら自炊してOCRで認識させる方が使いやすい。
スキャン用に原稿を準備するのではなく、製本した後のページをスキャンしただけの安価な作りの電子書籍に紙の本以上の価値は見出しづらい。
これでは電子書籍とは「安かろう悪かろう」と思われても仕方ない。
電子書籍の普及
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電子書籍と紙の本では、単に値段や媒体以外でもこのように電子書籍に対してだけの制限がある。
その割に電子書籍の利点は安い、手軽などチープであることしかない。
電子書籍が本格的に動き始めてかなり経つのに、業界の利権争いばかり。
雑誌グラビアの肖像権や権利関連の調整すらできてない。
不利を改善していこうとする姿勢もみられない。
そもそも電子書籍が一気に普及したのはアマゾンのKindleが上陸したからで、国内の電子書籍熱が高まった結果じゃあない。
やむなく、しかたなく、やらなければ独占されてしまうから出版界は重い腰を上げただけ。
電子書籍100%で過ごすなんてありえない。
電子書籍は、一部の本しか補っていない。
出版社が、電子書籍を紙の本にとって代わりえるクオリティの高いコンテンツにすることを目指しているようにはとても思えない。
・グラビアなど写真がないことがある
・電書化が遅い
・そもそも電子書籍になってない
・スキャンが安っぽい
・文字認識してない、大きさを変えられない
あくまでも紙の本が主体、電子書籍は単に選択肢の一つ。
電子書籍を使いたいユーザーのリクエストに答えただけ。
出版業界が、そう考えていると想定するとしっくりくる。
こんな状況で普及したら、それこそ奇跡ですよ。
普及云々より、未だに出版社や作り手側が普及させたい姿勢を見せないのに、表面上でだけ「普及させたい」「でも普及しない」という声が聞こえる。
この出版業界の二枚舌な姿勢が一番の問題だと思うが。
※この話何度目だ
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