「しょーこーしょーこーしょこしょこしょーこー♪」 辻田真佐憲「たのしいプロパガンダ」
本当に恐ろしい大衆扇動は、
娯楽(エンタメ)の顔をしてやってくる!戦中につくられた戦意高揚のための勇ましい軍歌や映画は枚挙に暇ない。しかし、最も効果的なプロパガンダは、官製の押しつけではない、大衆がこぞって消費したくなる「娯楽」にこそあった。本書ではそれらを「楽しいプロパガンダ」と位置づけ、大日本帝国、ナチ・ドイツ、ソ連、中国、北朝鮮、イスラム国などの豊富な事例とともに検証する。さらに現代日本における「右傾エンタメ」「政策芸術」にも言及。画期的なプロパガンダ研究。
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総統の顔
西洋軍歌蒐集館の管理人でもある著者が書いたプロパガンダの歴史を振り返る一冊。
「プロパガンダ」と聞くと堅苦しいものを連想するが実際のプロパガンダはエンタメなど楽しそうなふりをしてやってくる。
プロパガンダとは「宣伝・広告」なんだからあらゆるCMだってプロパガンダ。
報道、映画、アニメにだってプロパガンダは存在する。
たとえば大戦中ディズニーはヒトラーを揶揄するようなアニメーション「総統の顔」を製作した。
Donald Duck - Der Fuehrer's face | eng sub - YouTube
政治的、宗教的、イデオロギーなどを一般に広めるため、名前を知らせるために使われるプロパガンダ。
1990年 真理党から出馬したオウム真理教 教祖の麻原彰晃は選挙カーに乗り「しょーこーしょーこーしょこしょこしょーこー♪」と耳から離れない曲をリピートさせ麻原の名を広く知らしめた(その後ニュースでも広まるわけだが)。
エル・カンターレ
「金田一少年の事件簿」でお馴染みさとうふみやは「降魔法輪」というマンガを描いてる。
「エル・カンターレ ファイト!」
さとうふみや先生が金田一の作中でいつエルカンターレ・ファイト!の宣伝を始めるんだろうかと戦々恐々しているんだけど pic.twitter.com/Bbx30ud0v5
— けーはち (@kx8) 2015, 3月 26
もちろん幸福の科学の本尊は、エル・カンターレ。
幸福の科学のプロパガンダとして発刊されたコミック・エンゼルズに載ってる。
好評発売中!
新宿ブックファーストの新刊コーナーの端がいつもエルカンターレ特集。
あそこだけ何か特別な空気が漂ってるのが気になって……。
聖書はもちろんプロパガンダ的な性質があり、キリスト教の教えを学ぶ一番容易な手段として準備されてる。
標語、歌、逸話など物語、パフォーマンス、アニメ、マンガ。
マス(大衆)に対し思想や主張などをわかりやすくひろめるため、プロパガンダは明るく楽しい顔をしている。
本では最近の右傾エンタメも取り上げ、簡単に「右っぽいからプロパガンダだ」という浅薄な考え方は違うとしている。
耳障りがよく、物語仕立てにしてあり、キャッチーでわかりやすく明快。
そして政治信条、宗教思想ががっつり織り込まれてる。
確かにその通りで、宮崎駿に関しても
「我々が『風立ちぬ』にたいして〈右傾エンタメ〉と批判しないのは、宮崎本人の思想信条もさることながら、〈描きたいものを描く〉というそのあまりに個人的な欲望に忠実な態度に半ば気づいているからではないだろうか」(辻田真佐憲『たのしいプロパガンダ)
— トムヤザ (@yazatom) 2015, 9月 12
まー、その通りで。
パヤオは右か左かと言えば左巻きですが、それ以前に趣味人、芸術家としての主張が強い。
軍や戦争などを描いたからと言って即座に「右傾エンタメだ!プロパガンダだ!」という決めつけはそれはそれで歪んでる。
具体例を挙げ政治宗教思想の込められた楽しく明るいプロパガンダをわかりやすく知れる面白い一冊。
ゲッペルスの本を読みたくなった。
潮書房光人社
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