「電子書籍だからできること」ってなあに?
つまるところ何が言いたいか、っていうと、
書籍の内容に双方向要素を付けた としても、それはもはや ゲームかアニメか専用アプリか何か にしかならない
という点で、即ちそれは、電子書籍にしか出来ないことを付き詰め ても、どの道、その先は 普通に有象無象がひしめき合うレッドオーシャンしか存在し得ない
というコトです。
んー、まぁ、そーなんすよねーとしか。
でも、もうやってるし死屍累々なんすけどね、というお話。
それ具体例なんぼでもあるんですわ。
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ちまみれマイらぶ
これを書くのが何度目かって感じですが、電子書籍の付加価値としての動的なコンテンツって言う試みはすでに行われてる。nlab.itmedia.co.jp
学研が「子供の科学」に動画を埋め込んだのが2014年。
そんなに話に聞かないけどどーなったんすかね。
markezine.jp
ALL ABOUTの電子書籍は、動画埋め込み。
・『VOGUE』、iPad向け電子版が登場:日経ウーマンオンライン【トレンド(ライフ)】
VOGUEの電子書籍はレイアウトにこだわりがあったり、掲載されてる服を回転させたりすることができたりする。
この辺は電子書籍ならではでしたが。
・押井守氏が“電子書籍”初監督、「Adobe Edge Animate」でHTMLアニメ化 -INTERNET Watch
2013年時点で「ちまみれマイ・らぶ」と「銀色のうさぎ」いう2作品が動的な電子書籍……コミックアニメーションとしてアプリの形態で発売された。
押井守&藤原カムイというなかなかのビッグネームだったにもかかわらず、結果はこういう話題に触れてもらえないくらいの知名度しかない。
世界に1,000人いると噂される熱心な押井信者ですら流れは変わらなかった。
さらに村上龍の電子書籍への取り組みは広く、ryumurakami.com
このニュース&プレスリリースのTLを見れば、村上龍の前のめりな電子書籍への力の入れ方とその歴代のスベりっぷりがわかる。
村上龍の場合は原稿をつけてみたり、いろいろ試みてる。
ファンには嬉しいのかもしれないが外部への求心力としてはどーなんでしょ(元々求めてないのか)。
試みとしては革新的でも一部で話題になっても広がらず、一本の徒花として終わるのが大半。
電子書籍でしかできない
電子書籍でしかできないこととして
動的な要素を取り入れた電子書籍
というモノを指すのなら、それは大体、小説 → 音楽とか立ち絵付ける → (伝奇活劇)ビジュアルノベル
漫画 → 音楽とはモーション付ける → アニメ
実用書 → 双方向要素 (インタラクティブ要素) 付ける → 普通にスマフォとかタブレットのアプリ
という結論にしかならんよなぁ、と、僕は個人的に思っているので
とか挙げてるんだけど、そりゃあ動的なモノと限定すればそっちは行き止まりですよ、と。
上記のように既にやってる具体例も枚挙にいとまがない。
つか、動的でなくたっていいんですよ。
「ならでは」の利点は。
たとえば最近出た「ヤング・アダルトU.S.A.」って本がありまして
DU BOOKS
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映画の予告編が観れるだけでもずいぶん違う。
同じく長谷川町蔵の「文化系のためのヒップホップ入門」
さまざまな音源やCD、レコードを紹介してるんだけど当然これだって聴ければとても便利。
動画でも音源でも、あるいはリンクでもあれば随分違う(何度でも言うが)。
権利処理の関係がかなりめんどくさそうだけど(現在、電子板は出ていない)。
アルテスパブリッシング
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あとはデフィニティヴシリーズみたいなカタログ的な本は、電子化するならリンクとかあればホント便利な筈なんですよ。
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分厚いし重いのに。
いつでも最新
KINDLEの場合だけれども出版後に更新ができる。
紙の本は売ったら売り切りだけど2014年版の情報を2015年版に更新したり、増補改訂したりもできるのは面白い。
で、まぁこの更新機能を使ってKindleは連載を始めたりしたけど、今ひとつ話を聞かない。www.amazon.co.jp
いつのまにか3作品しかやってない時点でこの試みが上手くいったのかどーなのかよくわかる。
なにせ始めたときは18作品ですしおすし。www.itmedia.co.jp
バラ売り
さらにKindleSingleっていうバラ売りもやってるけど……。www.amazon.co.jp
一応、この辺も全部試してはいるんですけどねー。
サービスの推移を見てるとどうにも盛り上がりに欠ける。
面白いのは東京創元社のやってるバラ売り。
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こういう作品はミステリなりSFなりの文芸誌を買わなきゃあ読めないものも多いんだけど、こうやってまだ作品数のない新人作家の短編をしかも100円で売って読めるのは面白い。
文芸誌はいろいろ載ってるけど1,000円越えるんで。
ebook.itmedia.co.jp
京極夏彦は短編を一編単位で買えるアプリ。
京極氏の場合、ノベルスと文庫板で段組みを変えるくらいこだわりがあるので、このアプリでも生かされてる(現在販売終了?)。
e-novelsの夢がここに……。
・作家集団「e-NOVELS」、小説などをオンライン販売
もう10年以上経つのか……。
最後に
「電子書籍ならでは」ってのは別にインタラクティブな動的コンテンツとは限らない。
それを使いたいクリエイターが使うのはいいと思うけど現在のところ成功例はあまり聞かない。
元素図鑑みたいなアプローチが成功例としてあるけど。
電子書籍というか、子供向けのコンテンツとしては、こういう形式もありなのかもなー、と。
資料と図鑑とか、タイムラインが一方向*1でないものであれば、動的でもインタラクティブでも活用の方法がありそう。
電子書籍ならではの利点ってのは、たとえば試し読みをすぐにDLできるとか、キーワード検索とかそういう部分だったりする。
逆に(誰か書いてたけど)表紙をめくると書いてあるおまけマンガが無いとか(結構致命的欠陥)表紙の折り返しにある著者近影が省略されてるとか(これも致命的欠陥)そういう細かい遊びがないのは残念で仕方ない。
ユーザーからすれば買う店が違えば並べる棚が違うってのも使いづらくて仕方ない。
まず、そーいう基本的なことすらゴチャゴチャで、その辺も電子書籍を使ってようやく理解できるわけで、紙の本の捉え方をスライドするわけにもいかず、何度も言いますが、まず紙の本と発売日を揃えるとかしていただかないと同じ土俵にすら立ってないのが実際の感覚。
動的コンテンツ云々以前の現状なのよな、実際。
※10/16発売 竹内友「ボールルームへようこそ」(電子書籍化未定)
講談社 (2015-10-16)
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*1:ストーリーなどが始まって終わる。時系列にページが並んでいる