「一気に観ないと映画の面白さが伝わらない」なんて勘違いたっぷり
fujipon.hatenablog.com
元増田は「映画を一気に観ないと面白さが伝わらない」と言われたとかなんとか。
「レンタルDVDで、一本の映画を何日かに分けて少しずつ観る」のは「おかしい」かおかしくないかといえば、常識的な答えでいえばおかしくない。
QED。
なので以下は、余談。
ただ上に張ったfujipon氏の記事みたいに劇場映画とレンタルDVDの映画を同列で語るのはおかしい。
それはそれで違う。
例として出してるゴダールの鑑賞法なんてレンタルですら無い。
そもそも「頭だけ観る」のがいつの時代の話なのかもわからないし、特殊すぎてなんとも。
さらに映画館で上映されることを前提として作られる映画監督の監督論と村上春樹みたいな小説家の作家論はいろいろ違う。
押井守なんて映画論を語らせりゃほとんど金をいかに集めるかとか企画をどう通すかとか、そんな話が大半。
小説家はパーソナルな職業なのに対し、映画監督はチームプレイなんですよ。
そこでいかに我を通すかという世界。
同じクリエイターでもぜんぜん違う。
なので小説家の作家論と「レンタルDVDで」の鑑賞法を比較するのも違和感。
あと
むしろ、「1時間で終わって、料金が安い映画」がもっとあっても良いんじゃないかな。
ということなら、つまりfujipon氏の発想は、映画料金は時間で課金しているということなんですかね。
一時間で料金が安いなら、4時間の映画なら倍ってことですかね。
たしかグリフィスの「イントレランス」って3時間以上ありましたが、あれは二倍の料金が適正ってことですか。
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閑話休題。
ここからが屁理屈の本番。
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映画の本質
……ところで、最近ブログの更新が止まったりしてますが誰か読んでますかね?
読んでなくても続けますが。
まぁ、そもそもレンタルDVDでの映画観賞という状況自体、井筒監督が以前「あんなもんは映画の二次利用でしかない」と切ってましたし、自宅のテレビで観てる時点で「映画」としての価値は著しく欠落している。
たとえばライブというのはその場所で鳴らされる音…「場所」「音」という空気感がセットになっているもの。
そこから「音」だけを切り離したものがCDなどにパッケージされ「音源」として売られている。
これは似て非なるもの。
既に映画から切り離された「映画というコンテンツのパッケージ」に対して本来的な映画の鑑賞法やコード、マナーを用いること事態に齟齬がある。
各家庭にホームシアターシステムがあるわけじゃないんですから。
そもそも、いわゆる本物論を語るのであれば「映画の本質とは一体何か?」になる。
つまり
「映画観賞という環境から、映像だけを切り離したコンテンツに果たして映画の本質があるか否か」
ということですが。
犬に仏性はありや?じゃないですが、果たして映画の本質は「映像」か「音」か「環境や経験」などの場所か「ストーリー」か「一気に見ること」なのか。
そのどこに「映画の本質」が存在するのか?と。
そして「一気に観ないことでどんな映画の本質が欠落するのか?」と問いたい。
音質へのこだわり
先日、関ジャニの深夜番組「関ジャム」にコブクロが出ていた。
さすがタモリ倶楽部でもオーディオマニアぶりを披露していただけあって、スタジオでの録音のこだわりっぷりついて、マイクの位置やアレンジや録音環境のこだわりを熱く語った。
せっかくこだわり抜いて録音した音質を、手を上げ、元々のアナログの音質の高さを表現しながら
(アナログからデジタルによってユーザーにとって)便利になってるだけです。
そこからCDでまた音質が下がり(手を下げつつ)、もう今度は配信で(さらに手を下げ)、こんなケータイのちっちゃなイヤホンで聞いて(さらに手を下げつつ)
(中略)
あんだけ必死こいてレコーディングしてんのに出口こんなところに(床近くを手で指しながら)
素晴らしい環境でこだわり抜いた音源が聞き手の手に届いてその鼓膜を揺らす段階で、どこまで劣化しているのか、と。
だからスタジオでこだわったその録音をユーザー側で再現するために最低限でも、聴くならスピーカーに金を使えとのたまう。
確かにその通りではある。
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音楽は聴く側の環境によって大きく左右される。
どれだけマイクの微細な位置にこだわりバランスを調整し、ハイレゾだろうがMP3だろうがスマフォのスピーカーやブルートゥースのイヤホンで鳴らせば、元々あったはずの価値は大きく失われている。
これでは「何が正しいのか?」と問う以前の問題。
だから映画ってのは恵まれたエンタメなんですよ。
なにせ二千円くらい払えば作り手がこだわった映像と調整された音源で観賞することができる。
レンタルなんて数百円ですが、映画鑑賞の残り千数百円はあの環境に対して支払ってる。
劇場で観た「シンゴジラ」は素晴らしかった。
劇場で観た「マッドマックス」も「ララランド」も素晴らしかった。
でも、どれもこれも劇場の音の環境があってこそ。
家のテレビがどれだけ大きかろうがスピーカーに数十万かけてホームシアターにでもしてない限り、たかだかぶっ通しで観たことを「面白さが伝わらない」なんて言われてもなんの説得力もない。
レンタルDVDをよく借りて映画を見るのだけれども、自分の場合一本の映画を一週間に何回か分けて視聴する見方が好きだ。(例えば90分の映画だったら月・水・金曜日にだいたい30分ごとに分けて視聴したりする。キリが悪い場面ならキリのいいカットまで見たりもする。)
しかしこの事を知り合いに話したら、「映画なんて一気に見ないと面白さが伝わってこないでしょ!?」「一回見るのを止めてしまうと映画の世界に入り込むのが難しくなるじゃん!?」
とか言われた。
人から映画の見方が変って言われた
まぁ、自分なら
「映画の世界に入り込むなら音響システムも整備したホームシアター揃えて、大スクリーンで見てるの―?まさかテレビのちっちゃなスピーカーと無理やりHD画質にアプコンした480iのDVD画質で観て、映画の世界に入るこむとかなんとか言ってるわけじゃないよね????」
とか答えるだけですが、なにか(性格悪)。
画質には金遣うけど、音質には金遣わん人も多いからなぁ……。
そもそもレンタルのDVDを、中断して観て悪い理由が何も見当たらない。
レンタルDVDってのはそういう好きに観ていい映画の二次利用コンテンツ。
ユーザーマターにするためにパッケージにして一本なんぼで貸してる。
もしそれが気に入らないならそれこそユーザーではなく映画会社にでも「パッケージにするな」と言うのが筋。
レンタルDVDに「正しい見方」なんて無い。
レンタルDVDを映画館での観賞と同質に語ること事自体、筋が違う。
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最低でもこのくらいのスピーカーをテレビの下に置いてないで「映画鑑賞」をどーこー言えるのか謎。
テレビに付属のスピーカーなんて音質の面でいえば聞けりゃあいいってレベル。
DVDの音質なら元のソースも知れてるし、映像だってDVDでは……。
そんなもので一気に観ようがどーしようが脳の錯覚、おまそうの世界。
増田は、気にしなくていいんじゃないでしょうか。
そういえば映画コメンテーターの有村昆は一度に三本同時再生して映画を観るらしいですが。
一本を一気に観ないと映画の面白さがわからないなら同時に三本、しかもモニターで観るアリコンに映画の何がわかってるのか。
「観た」という事実だけが欲しいのか。
だからアリコンの映画評なんて、そもそも環境も何もあったもんじゃない前提。
それでも本数観て知識があればコメンテーターやれるんですから。
いい商売です。
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