ユニクロのデザインと変遷
ユニクロのスポーツラインって、元ネタはスポーツウェアよりもアウトドアウェアの方が多いんだろうなー。ネットにあふれるユニクロ記事はファッション的にありかなしかというばかりで、アウトドアウェアとの類似を指摘をしている人はほとんど見かけない
— 加野瀬未友 (@kanose) 2017年10月3日
kanoseさんのツイで思ったが、たしかにユニクロの記事というと何が安いかとか何を合わせるかとか。
即物的な話題ばかりでデザインや素材に関しての話題が少ない。
というかそんなに語れる人もいない気がしなくもない。
ユニクロのデザインと変遷について少し触れてみたい。
アウトドアは詳しくないのでそっちはkanoseさんにお任せするとして……(丸投げ)。
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UT
ユニクロのターニングポイントになったのは、2000年代初頭だと思う。
当時はユニバレなどと言われ、「ユニクロの袋が恥ずかしい」などとも言われた。
2002年。
ユニクロは、元イッセイミヤケの社長だった多田裕を室長としてデザイン研究所を立ち上げ。
デザインへの力を入れ始める。
同年、創業者である柳井が社長に復帰。
グローバル展開が加速。
そんな中、原宿にUTの店舗を開店する。
細長いクリアーな筒の中にTシャツを詰め込み店内に陳列した独特の店舗も、それまでのユニクロのイメージを転換しようとした一つの試みだったんだろう。
※2012年閉店 http://hara19.jp/archives/10940
プリントTシャツは、デザインが最もわかりやすい。
なにせボディのデザイン自体が大きく変わることはあまりなく、プリント次第で売れ行きも変わる。
企業とコラボしたり、デザイナーとコラボしたり、古着っぽい素材にしてみたり。
UTに関しては2013年からBAPEのNIGOを監修に据えることでデザイン志向がさらに強くなった。
デザイナーズインビテーション
そして2006年、ユニクロはデザイナーズ・インビテーションを開始。
デザイナー、ジルサンダーを迎え「+J」と名付けたカプセルコレクションを展開。
ウチにも、いまだに使ってるものが多い。
このデザイナー招聘企画はその後定番化。
2017年秋冬シーズンもイネス・ド・フレサンジュによるコレクションとJ・W・アンダーソンとのコラボコレクションを並行して行っている。
さらにビズポロなどを生み現在のラコステを牽引したデザイナー クリストフ・ルメールを迎え、デザイナーズインビテーションとは別にユニクロUを展開。
こちらは期間限定のカプセルではなく定番ラインと併売されている。
※上記タグ写真はウチにあるもの
他のファストファッションもデザイナーとのコラボは行なっている。
有名なところではH&Mが日本への進出に際しコム・デ・ギャルソンとコラボ。
マルジェラ(当時はマルジェラ本人が抜け、ガリアーノが就任する前のデザインチーム体制期)やマルニともカプセルコレクションを展開。
今年はアーデムがデザインを担当。
当時、店頭でギャルソンH&Mを見たが、デザイン優先で素材が今ひとつ。
そういう意味でも+Jは非常にバランスの取れたいいコレクションだった。
ユニクロとデザイナーのコラボ、なかなか面白い。
H&Mのようにいわゆる名の知れたハイブランドとの期間限定コラボならわかりやすくファッションクラスタも食いつく。
だがジルサンダーとの「+J」にしろ、ルメールにしろ、UNDERCOVERの高橋盾とのコラボライン「UU」にしろそうだが、どれもデザイナーの特色を出しながらも日常着の範囲で収まったベーシックなアイテムが多い。
・ユニクロ×アンダーカバー「UU」最後のメンズコレクション - フリースやヒートテックも | ファッションプレス
UUは、UNDERCOVER本筋よりSUEやJohnUNDERCOVERに近いデザインをしてる印象。
最近のsacai/UNDERCOVERコラボと比べても傾向の違いがよく分かる。
一方、H&Mの場合、例えばトリッシュ・サマーヴィル(ドラゴンタトゥーの女の衣装デザイン担当)とのコラボならスタッズを打ちまくったアクセサリーや、マルジェラならラペルなどがトロンプルイユになったジャケットやマルジェラ定番ペンキブーツなど、ブランドの特色が色濃く、個性的なファッションアイテムとしての傾向が強いアイテムが目につく。
![]() H&M×COMME DES GARCONS(エイチアンドエム×コムデギャルソン) 長袖シャツ サイズ42 メンズ コラボ 水玉 【古着】【中古】 |
![]() エイチアンドエム×マルタンマルジェラ / H&M×Martin Margiela コラボ テーラードジャケット 灰色 / グレー メンズ【中古】【USED】【古着】 |
上画像でもわかるが「ブランドがデザインを完全に担いH&Mから商品を出している」感じが強い。
今回のユニクロxJWアンダーソンとのコラボで言えば、たしかにレインボーカラーのアイテムは派手派手しいが、概ね日常着の範囲で使えるアイテムが多く見受けられるのも特徴的。
要はユニクロにはユニクロというデザインの主軸があり、その上でデザイナーが独自性を出していくという傾向なのかもしれない。
だからこそミニマルなジルサンダーとのコラボはとても相性がよく、クリストフ・ルメールとのコラボは脱個性に近く(というかもはやユニクロ本来のデザイン)なってしまったのかもしれない。
素材
ユニクロがデザインへ志向を強くした2006年、ユニクロはダイエーと業務提携を行いg.u.を開始。
g.u.はその後名前をGUに変え、ユニクロのアンダーラインとしての地位を固めることになる。
これがある種、ユニクロが従来のファストファッションとしてのブランドから乖離しようとしたもうひとつの分岐点に思える。
先日、がっちりマンデー!!でGUの内部を公開していた。
行われる会議の主題は「トレンドのアイテムを在庫を持たず如何に売り切るか」というもの。
GUの方向性を非常によく示している。
たとえばファストファッションのZARAは道を行くひとの服を観察し、そのトレンドを商品化して売るという手法を取っている。
デザインを起こしてから商品化へのスパンが短いからこそオンシーズンのトレンドで展開できるわけだが、GUも同じようにトレンドのアイテムを扱う。
いわゆるデザイナーズブランドがブランドのデザインを作り、その中からトレンドが出来ていくのに対し、ZARAやGUなどのファストファッションはトレンドが先にあり、次いでデザインがある。
ユニクロももちろん同じ傾向ではあるが、そういう中でデザイナーを迎え独自のアイテムを作り出すことで差別化を図る。
トレンド&価格という売り方をGUが担ったからこそユニクロは低価格帯ではなく、それなりの値段で、それなりの素材を使う展開を開始したとも言えるかもしれない。
機能性素材の口火を切ったのはもちろんヒートテックだったろうが。
GUがカシミアライク(風)のアイテムを扱い、ユニクロはカシミア(低品位ではあるが)を扱う。
GUが4,990円のモッズコートを扱い、ユニクロではルメールのデザインチームが12,900円のブロックテックモッズコートを出す(ブロックテックなので防寒じゃなく防水重視でテロテロですが)。
トレンドを追い安価でアイテムを提供するGUと、デザイナーを招聘し素材にも力を入れるユニクロ。
ルメールのチームによるユニクロUによるデザインの底上げもあり、デザインは着実によくなってる。
シームレス
ここ数年、売り切れ必至らしいDESCENTEの水沢ダウン。
その特色は、撥水素材と熱接着ノンキルト加工とシームテープ加工による防水性の高さ。
縫い目がないから、そこから水が侵入しない。
代わりに温度調節用としてベンチレーションも脇に装備されている。
ウチでは何年も前に一着買って以来毎年ヘヴィーローテーションの一着だが、ユニクロはそんな水沢ダウンのシームレスな技法を自社のウルトラライトダウンにも取り入れた。
もちろん本家 水沢ダウンのように高機能なDERMIZAX® MICRO STRETCHを使ったり、HEAT NAVIなど機能性素材を使っているわけではないし、ベンチレーションが必要なほどの保温性でもなく、シームレスに関してもそこここが塞がれていなかったりする(完全シームレスではない)んだが、それでもポケッタブルなウルトラライトダウンでコレをやるのは、さすが巨大企業の開発力。
うーむ、気になる。
なにせ値段が10倍違う。
多分買うのでいずれ水沢ダウンと比較してみますが。
他にもジュンヤマンの転写デニムを思わせるパイル素材を使ったEZYデニムなんてものもある(部屋履きにいい)。
ブロックテックにしろノウハウがないものを先行するメーカーから模倣して取り入れるのは、いわゆるリバース・イノベーション的な発想とも言えるかもしれない(まぁパ○リですが)。
ユニクロの場合、複数のデザインチームがデザインを行い、ユニクロというブランドとして展開させている。
デザイナーを招聘、抱えているところはまだしもそうでない……まだまだ展開の弱いアウトドアアイテムに関しては既存メーカーの追従であるのは間違いない。
だとすれば来年あたり、アウトドアで名の知れたどこかと協業する可能性も……。
ヒュッゲ
ユニクロなどを展開するファーストリテイリングの2017年8月期決算は増収増益を見込む。しかし、ユニクロの国内店舗を訪れる客数は同年2月時点で前年比ほぼ横ばいとなっている。東京・江東区に新型の物流拠点を造るなど、同社がビジネスモデルの変革を続けるのも、変化に乗り遅れれば簡単に滅ぶという危機感があるからだ。
誰がアパレルを殺すのか
デザイナーズブランドからすればユニクロを通じてマーケットに名が知れ、ユニクロからすればデザインのノウハウなどが手に入るデザイナーズインビテーションは間違いなく同社の力を上げる原動力の一翼を担った。
今年に関して言えばイネス・ド・フレサンジュとのコラボは、いわゆる海外で流行になりつつあるデンマークの「ヒュッゲ」を押さえたトレンドの一手。
機能性素材、デザイナーとのコラボ、トレンドへの先行投資。
ユニクロを見ていると、もはや安いから売れるというファストファッションの時代はとっくに終わっているのがよくわかる。
とりあえず今夜は、頭痛なので軽めの記事でした。