韓国映画「鋼鉄の雨」の反日と忖度

Netflixで「鋼鉄の雨」という韓国映画が配信になった。
結構、韓国映画を好んで観る方なんだけれども、この作品はなかなか今の状況を鑑みても色々引っかかる部分が多かった。

以下、ネタバレになるのでネタバレが嫌いな方は一度観てもいいかもしれない。
これから書くような事を何も考えなければ、結構面白く観れる。
作品自体の評価は高い。




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あらすじ

www.netflix.com

舞台は、現代。
突如、北朝鮮でクーデターが勃発。
米軍のミ多連装ロケットシステムを奪取し、開城に打ち込み政府中枢を麻痺させる。
その際、負傷した最高権力者一号を連れ韓国へと逃げ込む元諜報員。
危篤状態のまま韓国へと入国する最高権力者一号。

権力を握ったクーデター派は、韓国に対し核を打ち込むと宣言。
米国と韓国大統領は、先制攻撃として軍事施設への核攻撃を主張。
しかし次期大統領はそれを頑なに拒否する。

混乱の最中、北朝鮮から韓国へ最高権力者一号の命を狙い暗殺舞台が送り込まれ、一人諜報員は立ち向かうが。

……といった感じ。

今のご時世を盛り込んだ内容、ガン=カタを思わせる拳銃持ったままの格闘シーン、エスピオナージュ的な駆け引き、バディものの王道など作品自体は面白い。
エンタメとしてよくできている。

が、その一方で気になるシーンもいくつかあった。

日本嫌い

「韓民族の20世紀は何から始まった?」
「韓日併合です」
「併合ではなく国家の屈辱だ。36年間統治されたあと1945年に解放された。
しかし明確にすべきことがある
(中略)
20世紀、韓国のイデオロギーは日本でした。日本を手本とし背中を追いかけた。
その結果、日本企業を追い抜いたのです。
こうして日本というイデオロギーに対応してきた。
では北はどうしたでしょうか?
日本を滅ぼしたのは?」
「”核”です」
「そうだ。北は日本を破滅させた核兵器の開発に力を入れます」

教壇に立つクァク・トウォン演じる外交保安首席秘書官が「かつて日本にされたことを忘れるな!」みたいな反日の内容で教鞭をとってるシーンがある。
普通に「日本を滅ぼした」って、おま

ただ反日描写自体は、韓国映画ではありがち。
カタコト日本人が登場するくらいありがち。

だが、北朝鮮は日本へのイデオロギーとして核兵器を必要とした……ってこの話、果たして必要か。
なにせこの映画で日本の比重は、

韓国>北朝鮮>米国>>>(大国の壁)>>>日本

くらいのもの。
存在感が極めて薄い。

そもそも主人公らに、日本も日本人もほぼ絡まない。


終盤、北朝鮮のクーデター派がコントロールを奪った核兵器をまず日本に向け発射。
弾道弾迎撃ミサイルを発射し、上空でそれを撃ち落とすイージス艦(わを)。

クーデター首魁曰く
「米帝は我々よりも日本の言うことを聞く」
あぁ、うん。
いやー、そりゃあ韓国に撃ったら映画終わるけど、にしても突然日本に向けて撃つかね。
無関係だと思ってたら突然ビンタされた、みたいな。
このシーンくらいしか日本がフューチャーされる部分はない。

結局、作中で米国は「韓国と北朝鮮の問題だろ?我々は手を引くよ」と言い出す。
狙い通り、愛人の日本に泣きつかれると弱い米帝。

核兵器の扱いが「ブロークンアロー*1」並みの適当感も気になるところ。


米国と日本は蚊帳の外、というか事件から距離を取る第三国。
これだけの事態なのに日本なんて総理すら出てこない。
協力の申し出もしない国、日本。
いやー、冷たい国ですねー(小並)

中国の諜報員からは、駆け引きで情報を引き出し、アメリカの諜報員からも情報を引き出し。
一方、日本の内閣調査室の調査員とは、国外退去で帰るとき中国の仲介で挨拶だけ……。
言葉すら交わさない。

この存在感の薄さなのに冒頭から嫌われ、戒厳令になったら韓国から逃げ出し、北朝鮮に核ミサイルを真っ先に撃ち込まれ、米国に泣きつく。
この映画、こんな感じでそこここに日本嫌いがにじみ出ていてなんとも。
ここまで嫌いなら、いっそ日本が存在しない体でやって欲しいもんだが。
 
 

大統領

TIME Asia 2017 5月 韓国大統領 文在寅 カバー インタビュー

さらに気になったのがイ・ギョンヨン演じる次期大統領の存在。

舞台が大統領入れ替わりの時期に設定してあり、現大統領と次期大統領が政府中枢にいる状態。
これ、物語の設定上なんで必要なのかなー?と思ったが見ていてわかった。

現大統領が強硬な姿勢をとるのに対しイ・ギョンヨンの次期大統領はあくまでも対話を求めようとする親北朝鮮な姿勢。
この韓国の政治権力内での対立項……親北朝鮮と反北朝鮮を表すために権力トップを二分している。
そして親北朝鮮な次期大統領、白髪に眼鏡……これムン・ジェインに見えて仕方がない。

もちろん南北統一は韓国の悲願でしょうが、それにしても反北な政治家は愚かに描き、親北な政治家は誠実そうに描くというのはなんとも香ばしい。
ムン・ジェインな親北朝鮮な政策姿勢まるまんま。
さらに現場レベルでも北朝鮮の元工作員と韓国の諜報員が手を取り合いバディとして事件の解決に奔走。
一体感を見せつける。
この国家の一大事が個人レベルの解決手段へと収束して行く。


プロパガンダ

ただこうした感想も結構少数派らしく、政治的ディテールをあまり気にして見ていない人が多いのは結構意外。
なんか文句のような内容ばかり書いたが、作品自体は結構な王道バディもの。
終盤のいい話感で全部持っていかれるのは理解できる。


こういう作品も韓国国内だけではなくNetflixを通じれば世界中に配信。
韓国でかなりヒットしたらしいが、劇場公開するより広く見られるかもしれない。

だがプロパガンダは、楽しい顔をしてやってくる。
配信は、プロパガンダのルートとしても非常に使いやすいのではないのかな。

現政権へと忖度しているような内容は、素直に飲み込もうにも何か喉に引っかかる。

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*1:96年のアメリカ映画。クリスチャン・スレーター、ジョン・トラボルタ主演。核兵器を巡る攻防が色々あるツッコミ満載の作品