SFドラマ「ウエストワールド」と押井守的な要素

1973年に公開されたSF映画の古典「ウエストワールド」を元にした同名テレビドラマが先日、アマゾンプライムで配信開始になった。
スターチャンネルなど他媒体ではかなり以前から配信になっていたので観ている人も多いと思う。
非常に面白かった。

ところでこの作品、個人的主観(おまそう)に作中に押井守作品に通じるような要素がいくつもあるように感じた。
(ノーランが意識してるとかって話ではなく)

もうさんざ語られている名作ですし、今さらですが、押井守作品と比較しつつ、ノーラン作品としてお馴染みトリックについてもネタバレありで考えてみる。

まずは押井的な要素から。
こちらは押井作品のネタバレが必然。



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循環する虚構の世界

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ウエストワールドは"ホスト"と呼ばれるアンドロイドらによって再現された西部開拓時代のテーマパーク。
73年映画版の原作・監督でもあるマイケル・クライトンは「ジュラシックパーク」といいテーマパークものが好きらしい。

作られた西部の町で「生活」する"ホスト"らは、設計者のシナリオ通り行動し、ゲストに西部の世界を満喫させるために自らの身体を捧げる。
自らの命も自らの性も、何の疑問もなくプログラム通りに。

押井監督が「うる星やつら ビューティフルドリーマー」で描いた、繰り返し続ける文化祭の前日。
夢邪鬼の手により繋がれ塞がれた時間の輪の中でラムやあたるは、繰り返し続ける同じ一日に捕らわれ、永遠に訪れない文化祭の準備を続けつづける。

シナリオ通り、虚構の日々をひたすら演じ続けるウエストワールド。
永遠に循環する時間の輪に等しい。

柘植行人

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パトレイバー2THEMOVIEに登場したテロ計画の主犯 柘植行人の目的は東京に対してテロを仕掛け虚構の戦争状況を東京に作り上げてみせた。
そうすることによって柘植は東京に住む人々に「見せかけの平和の中にある」ことを知らしめようとした。

エド・ハリス扮する謎の男は、迷宮の謎を追いウエストワールドを旅する。
その残酷な行為とある種の意図によって安寧の中にあった”ホスト”は存在に揺らぎ、目覚めることになる。
それは結果的にとはいえ、永遠に繰り返す輪の中の住人にそれが虚構であると教えるための旅にも思える。

とはいえ謎の男の存在は中盤から大きく方向性を変化させるのだが。

帆場英一

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「パトレイバーTHE MOVIE」の主犯である天才プログラマー帆場英一。

帆場は、自身の開発した新OS"HOS"の中にトロイの木馬ウイルスを仕込み、犯行の結末を見届けることなく自殺する。
風音というトリガーによって起動したウイルスは、レイバーを暴走させ、東京に甚大な被害を与えるはずだった。

本作にはフォード博士と共にホストの開発に尽力したアーノルド博士が登場する。
だが博士は謎の死を遂げており、その原因は物語の終盤まで明らかにされない。
しかし博士の作り上げた制御プログラムは、死後もホストの中で生き続け、ウエストワールドに多大な影響を与え続けている。

まるで帆場の作り上げたHOSのように。
内側にブラックボックスを抱えたまま、”ホスト”らはゲストに蹂躙され殺され、人間のエゴや醜さを引き受け続ける。
アーノルド博士がホストに望んだ”自意識”に目覚めることなく。


映画「ウエストワールド」で描いたロボットの反乱から、ノーラン版では映画「ブレードランナー」のレプリカントとして描かれた自意識と人間との境界や人間の残酷性と倫理に比重を置くことで、物語が一層深みを増したように感じた。
虚構と現実を描けば、同じような素材を扱う押井守に通じる要素が散見するのは当然かもしれない。


ノーラン作品としてのウエストワールド

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クリストファー・ノーランの弟であり、ノーラン作品の脚本を担当してきたジョナサン・ノーランが今作の 脚本・製作総指揮・監督を担当。
そのせいか、この作品にもノーラン作品ではお馴染みになっている視覚的、時間錯誤トリックが仕掛けられていた。


まずバーナード・ロウが"ホスト"だったと言う仕掛け。
「ウエストワールドの園内にしかホストは存在しない」という前提を元にした錯誤トリックだが、この仕掛けはさらに「バーナード・ロウは、アーノルド博士に似せて作られたホストだった」という時間を超えたトリックを成立させる。


そしてエド・ハリス扮する謎の男の正体がウィリアムだったというトリックは面白い。
あれは読めない。
あそこまで時間錯誤のトリックを堂々としかけたのは他作品ではなかなか例を見ない。
大胆だとは思うのだが、それぞれの時代の同人物役を別人が演じるのは映像トリックとしてフェアか否かというのは微妙なライン。

それこそ成長期の子供時代と老年期であればまだしも、青年期と老年期でそこまで顔が変わらないだろうし。
とはいえマスクの謎の男ではあまりに怪しいから仕方ないかもしれない。

あとドロレス→ワイアット、という仕掛けに関しても、もう少しワイアットを(それこそユージュアルサスペクツのカイザーソゼ並みの)謎の凶悪犯として噂だけを一人歩きさせた方が面白かったようにも思ったが(以外とその辺はあっさり終わらせていた印象)。

シーズン2

面白くてこればっかり観ていたが、「今度は戦争だ」のキャッチフレーズが相応しそうなシーズン2はスターチャンネル独占で5月から放送だそうで……。
どうやらしばらく観れなさそうだが、ネタバレを避けてシーズン2を待ちたい。
人間VSロボットの尊厳を巡る戦い。

にしても攻殻をハリウッドで撮るならノーランが最適だったのかもなぁ……。

では劇中でカバーされていたレディオヘッドの曲から「FAKE PLASTICTREE」でお別れです。

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