映画「アトミック・ブロンド」を観るとき注目すべき3つのポイント

1989年、東西冷戦末期のベルリン。世界情勢に多大な影響を及ぼす極秘情報が記載されたリストが奪われた。イギリス秘密情報部MI6は凄腕の女性エージェント、ロレーン・ブロートンにリスト奪還を命じる。ベルリンに潜入中のエージェント、デヴィッド・パーシヴァルとタッグを組み任務を遂行するロレーン。彼女には、リスト紛失に関与したMI6内の二重スパイ“サッチェル”を見つけ出すという、もう1つのミッションがあった。リストを狙い、ベルリンに集結する世界各国のスパイ。誰が味方で誰が敵なのかわからなくなる状況下、ロレーンと世界の運命は?

シャーリーズ・セロン主演。
舞台は、ベルリンの壁崩壊前夜のドイツ。

現役活動中の諜報員リストを巡り、英国諜報部員アトミック・ブロンドが活躍するアクション作品。
……と表現するとベタな感じ。

必見級のスパイ・アクション映画。
女性スパイがメインでここまでゴリゴリの格闘アクションはあまりないかもしれない。

ここではポイントを3つに絞ってこの映画の楽しみ方を考えてみたい。



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格闘


↑ネタバレ動画なので気にする方は再生しないほうが。

映画「マッドマックス」でアクションに目覚めたシャーリーズ・セロン。
もはや「女必殺拳」の志保美悦子状態。
アクションのキレが半端ない。
ボコボコのせいで作品の何分の1かは青タン作って目元が腫れてるか、それを隠すサングラスか。

近接戦闘のプロとして、武田鉄矢のハンガーばりにロープやランプやそこら中のものを手当たり次第に使い、襲いかかるドイツ警察やスパイをなぎ倒す。
パワー的に劣る部分をテクニックとスピードで補い、肘膝での戦闘はクラヴ・マガ?かな。

イスラエル軍式護身術のクラヴマガは、武器も想定しているため実践的。
そこら中のものを武器として使うのもクラヴマガ の特徴の一つ。
手で殴ると拳を痛めることがあるので肘を多用したり、膝を正面から蹴って折ったりする。


ちなみに映画「アウトロー」や「バットマン」では頭を抱えて接近する肘中心の格闘術KFMを採用したことがあった。
最近の映画は昔みたいなアクションの見栄えより、泥臭いリアルさを求めてマイナーな格闘術に走りがちかもしれない。

カメラワーク

前述したアクションシーンもだが、カメラワークが非常に面白い。

以前、「ボーンシリーズの細切れになったアクションシーンが他の映画に悪影響を与えた」という話があったが、この作品はアクションシーンを切らずに長回しして、逆に緊迫感を増す効果を出してる。
上の動画を見てもわかるがアクションシーンでカットを切ることでストライクからストライクに至る途中の動作が省略される。

カット割には、観客に対しメタ・フィクションとして時間や空間を端折る効果がある。
省略されることで映像がダレずに見やすくなる。
Youtuberが細かくカットを重ねるのも同じ理由。
あれが編集なし、間も繋がないノーカットならダラダラしていて見れたもんじゃない。


ドイツやロシアのむくつけきスパイや警察を相手にシャーリーズセロン扮する英国情報部の諜報員がその細身で戦う。
日本だと筋肉もないアイドル女優が殺陣をやるから長回しなんてとてもできないが(だからカットを割る演出で格闘シーンにスピード感を感じさせたり、不自然なワイヤーアクションを多用する)。

階段で格闘シーンに突入。
襲撃してくる男ら相手に一人で立ち向かうシャーリーズセロン。

このシーン、徹底してカットを割らない。
普通なら何十何百カットを割るような動きの連続なのにもかかわらずひたすら戦いが続く。
普通、敵を倒して増援が来ればカットを割るがそこでも割らない。

観客はリアルタイムで、主人公が殴られ蹴られ投げられ、殴り返し蹴り投げるシーンをひたすら見続けることになる。
しかしダレない。
泥臭く激しいアクションの連続は、緊張感を持続させる。肉弾戦からカーチェイスまで続く緊張感、そしてようやくの緩和。
そこで……というのも映画的な仕掛けの1つ。

さらにこの映画、白っぽく退色したトーンを全体的に使う。
すると赤や青などは反対に引き立ち、目立つ。
アクションシーンもこの色彩だからこそ、陰惨で泥臭いのにドライでクールに見える。

The Coldest City
The Coldest City
posted with amazlet at 18.06.20
Oni Press (2012-05-16)

もちろん原作がグラフィックノベルなのも当然意識してるでしょうが。
(それを極端にやったのがフランク・ミラーの「SIN CITY」)


音楽

今作で使われる音楽も幅広くNEW ORDER「BLUE MONDAY」(89年という時代背景に合わせてカバーver)からボウイ、クラッシュ「ロンドンコーリング」(しかも英国に帰ったシーンで)まで幅広く、90年代洋ロック好きにはど真ん中。
ベルリンの壁崩壊前夜。

「ショーン・オブ・ザ・デッド」「ベイビー・ドライバー」など歌入り洋楽を上手く使う映画は他にもあるが、この作品の使い方も上手い。
アクションシーンに重なって鳴るのは主に「そこで鳴っている」体。
なので、たとえば部屋を襲撃されるシーンなどで、格闘中後ろに曲は流れていても部屋から脱出すると音が遠くなり、外で戦うときは自然音(打撃音など)、最後のキメのところだけは映画的にサビが流れる。
さらに階段からの長回しに関しては、カーチェイスに入るまでは背景に一切音楽がない。
呼吸、打撃、息遣い、うめき声などの生々しい音だけがひたすら響くからこそ長回しでもダレず緊張感が持続する。


……などなど。

以上、3つほどポイントを挙げましたが最近見た中でも出色の作品。
ベルリンの壁崩壊の裏側とそこで暗躍する英国諜報部。

とりあえずこれと「スリービルボード」を観ておけば間違いはないかと。

アトミック・ブロンド(字幕版)
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