宇宙を駆ける仏教SF 八島游舷「天駆せよ法勝寺-Sogen SF Short Story Prize Edition-」

天駆せよ法勝寺-Sogen SF Short Story Prize Edition- 創元SF短編賞受賞作

巨大な九重塔・法勝寺は、仏教発祥の星・閻浮提を代表する星寺にして最新鋭航行機能を備えた飛塔である。三十九光年離れた星の大仏の御開帳に向かうため、七名の宇宙僧を乗せ、四十九日の旅に出るが……飛行中の法勝寺を怪異現象が襲う。日経「星新一賞」と「創元SF短編賞」を連続受賞した新鋭が放つ、驚天動地の仏教スペースオペラ! 加藤直之によるカラー挿絵2点を収録。

宗教を扱ったSFではやはりキリスト教を多く連想する(神を殺す銃を発明するバリントン・ベイリーの「ゴッド・ガン」、テッド・チャンの「バビロンの塔」「地獄とは神の不在なり」とか)が、今作は珍しく仏教SF。
舞台となるのは、科学ではなく佛理学(ぶつりがく)が発達した世界線。



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仏教&SF

佛理学。それは、万物を構成する佛質と佛精を相互転換する手法を研究する学術分野である。

地球から遠く離れた持双星で百八十年ぶりの大仏開帳に合わせ、地球を飛び立とうとする飛塔 法勝寺。
祈祷の力を蓄え、僧侶を乗せ宇宙空間を渡る尖塔の中、次々と怪異が起きる。

第九回創元SF短編賞受賞作の今作。
電子書籍だとバラ売り108円なので読みやすい。

仏教はベースだがもちろん、あくまでもSFなので宇宙飛行士→宇宙僧、ロケット→飛塔の読み替え。
宗教であってもロジカルであればSFになり得る。
塔が飛び立つ力はロケットエンジンではなく祈念炉であり、祈祷の力を蓄え地球を離れる。


SFホラー的な定番として密閉された塔の中で、怪異が起きるわけだが、ここももちろん仏教ベース。
読経し、摩尼車を回し、仏を招く。

西遊記のガンダーラのごとく遠く離れた星の大仏開帳のため向かう僧侶ら。
訪れた星で待ち受けるものとは……。

ところで、これを読んでいたら、昔(中学生くらい)読んだロジャー・ゼラズニイ「光の王」を思い出した。
あちらは仏教というかインド神話だったが。
どちらにしろ仏教&SFはニッチかもしれない。

短編バラ売り

この電子書籍の短編バラ売り、名前を知らない新人作家の売り方として面白い。
電子書籍だからこそ短編単位で売れる。
短編だから気軽に読めるし値段的にも手を出しやすい。
積読があるのに、いきなり名前も知らない作家の長編を手に取るのは……。
そういえば短編集一冊まるまるバラ売りしてみたらどうなるんだろう?

短編なのですぐに読み終わってしまうが、この世界観で他の短編も読んでみたいと思わせてくれる。
非常に面白かった。
また注目したい作家が増えた。


過去に同じく創元SF短編賞を受賞した高島雄哉氏は今度短編集を出すそう。
同じような展開ならいいのだが。

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