病めるスーパーヒーローへの断罪 ドラマ「THE BOYS」


THE BOYS Official Trailer (2019) Super Heroes Movie

アマゾンプライムオリジナルドラマ「THE BOYS」観終わったので感想を。
スターウォーズを追い落としハリウッドの人気ナンバーワンの座にあるスーパーヒーローものをシニカルに描いた今作。
もともとアメリカのヒーローものは内省的だったり、正義というものの危うさに懐疑的だったりするわけですが、なんだかんだ最終的に愛は勝つというオチでやり過ごしてきたわけで。。。



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今作に登場するのはどこかで観たような典型的なスーパーヒーロー。
空を飛び、目から熱線を発するスーパーマンを思わせるヒーロー ホームランダー。
ザ・フラッシュのように高速移動できるAトレインなどなど。
彼らヒーローが所属する会社セブン。

田舎から出てきたばかりのヒーロー候補アニー(スターライト)は念願叶ってセブンに入社。
子供の頃から夢に見たスーパーヒーローたちの仲間入りを果たす新入社員。
しかしいきなりセクハラパワハラの嵐に出鼻をくじかれる。

吉本だのレペゼン地球だのでパワハラセクハラが騒がしい今、なんともタイムリーな展開。
それにしてもヒーロー、パンツを履くのも脱ぐのも早い。

一方、電気屋で働くヒューイは目の前で恋人を殺され、謎の男ブッチャーからヒーローへの復讐に誘われヒーローを監視するTHE BOYS復活に巻き込まれることになる。

病めるアメリカのヒーロー

とは言え相手はヒーロー。
一筋縄ではいかない。

銃は効かない、爆弾も効かない。
壁を透視し、空を飛び、超高速で移動し、深海に潜れる。
対して一般市民なんだからなかなか難しい。
ヒーローを捕まえたとしても殺すに殺せない。


特殊能力を持つ正義の味方はヒーロー、私利私欲に走る者らはヴィラン
この作品ではいわゆるヴィランのように倫理観に劣る特殊能力者らを擁し、イメージ戦略で正義のヒーローとして売り出すセブンという会社がある世界なんだろう。
表面上は正義を演じ、しかし裏では透明になって女子トイレに潜んだり、ドラッグに溺れたり、人を殺してももみ消す。

M・ナイト・シャマラン監督が「アンブレイカブル」や「ミスターガラス」で描いたように現実世界において特殊能力を持つ存在(ヒーロー)がいればどうなるか?という考察はこれまでも色々とあった。
アメリカのヒーローは自分の存在に悩み、正義とは何かという問いにいつもぶつかる。
アイアンマンもバットマンも、スパイダーマンすらも。
ウジウジ悩むのが定番。

しかし今作のヒーローは大して悩まない。
なにせ根っこがヴィランなので。
結構欲望に忠実に行動するし、表面的な「会社の作るイメージ通りの正義」を演じればいいので悩む必要がない。
だから現実とのギャップに悩むのはアニーこと田舎娘のスターライトだけ。


今作で言えば、セブンというスーパーヒーロー企業にとって中心は資本主義。
タレントのようにイメージ戦略を行い、売り込み、行政に入り込み、当面の目標は国防で利権を得ること。
ヒーロー個人は私利私欲で生き、あくまでも仕事として正義を行う。
小市民的ではあるが力がありすぎる故に倫理観に欠け、暴走する。

終盤、軍に協力してホームランダーがテロリストの基地を襲撃するシーンがある。
確かにスーパーマンクラスの能力は市民を助けるよりもよほど軍事利用に向いてるかもしれない。
バットマンみたいに不殺でないホームランダーみたいなヒーローは裁判をせず悪党の死体を山積みにしてしまうから人権派から色々言われそうだが、そういう団体もセブンは潰してるのかもしれないとか思ったり。

そしてこれらのヒーローは病めるアメリカの暗喩でもあるのかもしれない。
薬に侵され、武力を持って正義をなし、正義を謳いながらも自国のために他国で武力を行い、時には自分らが存在するため外に敵を作り出す。
そんなセブンをCIAやFBIが追うんだから、実にシニカル。


選曲センスもいい。
ジェーンズアディクションザ・ダムド、クラッシュにイギー・ポップ
BOYS AND MENの「帆を上げろ」が出てきた時は驚きましたが。

後半になるにつれセブンの悪行がボロボロ出てきて、THE BOYSはズタボロ、ホームランダーのサイコパスっぷり全開のまま第2シーズン。
一番パワーがあるやつの闇が一番深いのは色々ヤバい。
盛り上がってきたのにここで一旦終わりとは残念。
これは次シーズン期待せざるを得ない。


にしても、アマゾンプライムって日本オリジナルが面白くないのはどうにかならないだろうか。
唯一の良心、有田と週プロも遂にシーズンファイナルとなるといよいよ見るものも無くなる。