真下みこと「 #柚莉愛とかくれんぼ 」

#柚莉愛とかくれんぼ

アイドルグループ「となりの☆SiSTERs」、僕の推しは青山柚莉愛(あおやまゆりあ)。
その柚莉愛が動画生配信中に血を吐いて倒れた。
マジか! 大丈夫なのか?
でも翌日、プロモーションのためのドッキリだったってネタばらしが……。
本気で心配した僕らを馬鹿にしやがって。ありえない、許さない!
SNSで柚莉愛を壊してやる!

第61回メフィスト賞受賞作ということで読んでみました。
リーダビリティが高くて一気に読了。

インディーズ(地下)アイドルとそれを囲む環境。
握手会、Twitterライブ配信、トゥギャッター、まとめサイト
アイドルのとある事件をきっかけとした顛末が描かれ、この時に出てくるディテールが細やかというか、現実にありそうなことだからついつい読み進めてしまう。
純粋にミステリーとしてだとちょっと「?」なところもあるけれど、そういう背景部分の書き込みなんかを評価しての、そしてミステリ番外地メフィスト賞だからこその作品と言えるかもしれない。

ネットに詳しければかなり面白く読める。
面白いんですけどね、ただ読者は選びそう。

ここからは多少ネタバレありで個人的な疑問なども。



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炎上プロモ

#柚莉愛とかくれんぼ

#柚莉愛とかくれんぼ

まず柚莉愛を中心とした炎上騒ぎ。
これに関してはよく描かれている。
実際起きた事件の内容より炎上が起きることで騒動が過激になってしまい、どんどん意味が変わってくる。

例えばレペゼン地球とジャスミンゆまの炎上騒ぎってのが去年ありました。

www.huffingtonpost.jp
セクハラを利用した炎上騒ぎを起こし、ジャスミン知名度を上げる作戦、だったそうですが結果としては大失敗。
本体のレペ地はテレビ出演(しくじり先生)中止や、直前に控えていた西武ドームでのライブまでお流れになってしまった。

レペ地の炎上事件は正直、#柚莉愛〜の炎上騒ぎよりもよほど巧妙で仕組まれたものでしたが、デビュー直後のジャスミンの虚偽&元々アンチと信者が多く過激なことをやるイメージのあったレペ地だったために騒動もすぐに終了した。
とはいえ当初の目的だったジャスミンゆまのプロモーションが成功したか?と言われるとかなり疑問。
ジャスミンのツイートへのリプを見てもアンチの増加は間違い無いでしょうが。

DJ社長は、炎上プロモを仕掛けた理由として、

DJ社長:あの….。正直に言ってもいいですか…。

えっと、単に動画を見ればみんなドッキリだって、わかって笑ってくれると思っていたんです。

白河:笑ってくれる?

DJ社長:はい。ジャスミンが僕らと作った嘘のLINEをTwitterで、出す。次の日に僕が坊主になって、謝罪する。世間が「え?」と騒ぐ。その次の日に、自分が坊主頭のかつらをとって、「ドッキリだったよ〜ん」。そこで爆笑をとるつもりでした

白河:ところが誰も笑わなかった。

DJ社長:はい。 「イエーイ、結局、坊主頭も特殊メイクだし、炎上商法だぜ~」みたいなノリで。それで、マキシマム ザ ホルモンさんたちに音楽動画に出ていただいて、最後に僕たちをボコボコにしてもらって、「お前らパワハラはダメだ、炎上商法はダメだ」って言ってもらって、終わりという筋書きでいました。

だから、俺の中では、実は、「パワハラはダメ」っていう一連のストーリーとして完結したつもりだったんです。

と語ってる。
どういう活動をしていくかは不明だけれども、少なくともプロモーションというのはそれなりにイメージを作り上げていくためのもの。
コアなファンを作りたいなら炎上でもいいかもしれないがマスなファンを獲得するには炎上というのは悪手。
嘘をつく、手段を問わないと言ったダーティなイメージがどこまでもついてまわる。

青山柚莉愛が炎上プロモを仕掛ける、というのはまだいいんですよ。
ただそこに何かしらの謎を仕掛け、結局それが何もない。
これが疑問なんですよね。

「柚莉愛を見つけてね♡」
「制限時間は今から二十四時間♡♡」
「みんなのこと、信じてるよ♡♡♡」
「#柚莉愛と隠れんぼ」

こうやって事件を匂わせ、ファンはそれを考える。
ここまではいい。
でも結局、これに答えがない。
ないどころか24時間後に嘘だとすぐバラす。
最初から炎上と謝罪しか考えてないってことになってしまう。

DJ社長と同じく、

DJ社長:あの….。正直に言ってもいいですか…。

えっと、単に動画を見ればみんなドッキリだって、わかって笑ってくれると思っていたんです。

白河:笑ってくれる?

DJ社長:はい。ジャスミンが僕らと作った嘘のLINEをTwitterで、出す。次の日に僕が坊主になって、謝罪する。世間が「え?」と騒ぐ。その次の日に、自分が坊主頭のかつらをとって、「ドッキリだったよ〜ん」。そこで爆笑をとるつもりでした

同じ目論見のプロモ計画はやっぱり浅い。
だからまるで@TOKUMEIは炎上に手を貸すのが後ろめたいみたいに書いてますけど、マネージャーの目論見に乗っかってるから仕掛けとしては成功なんですよね、これ。

売れないし、どうでもいいから配信で炎上しかけてどんな形でもいいから知名度上げ、失敗したらマネージャーは部署を変えてもらう。
そんなマネージャーって多分ダメですよね、その後のグループの展開を考えても。
なのに青山〜は盲信してるんですよね、なぜか。
アイドルがそれで売れるわけないし、今まで炎上で売れたアイドルっていない。

それに血は一番やらんやつですよ。
アイドルと血(死)はダメなんで。
お笑いですら番組中、出血しても隠すのにアイドルが「血」って。

アイドルってのは表面上のイメージが一番大事な商売。
なので炎上しかけたら、それはもう恣意的にグループ解散考えてるしかないんですけどね。
もちろん炎上事件の責任は、マネージャー田島の安易さと能力不足、にしてしまえばいいんですけど、それにしても炎上の仕掛けが浅すぎてなんとも。
作中ではうまくいったものの、炎上しない可能性の方が高い炎上プロモですから。

そして「炎上させたから最後のアレに繋がる」はずなんですけど。
あの犯人なら炎上してなくても事件を認識するだろうし、激昂するだろうし、やるんですよ。
だからよく考えてみると実は炎上と事件が微妙につながってない。

アイドルファン

さらに繰り返しますが、ミステリとしてならもう少し掘り下げて欲しいってところもある。
ハッシュタグつけてヒントが幾つか、それで?って。
もう少しそこを深掘りするかと思ったら語り手がいきなりやめて、もう炎上へと突入していく。
ここで(仮)にしろヒントに関しての考察があってもいいと思うんですけどね。
ヒントがさんざ考察されファンが真剣に考えた上でちゃぶ台を返してファンが怒って炎上、ならわかるんですけど、ヒントはおざなりだし、推理も考察もないままネタバレに突入してファンが怒る、、かなぁ?
どうだろうか。

ファンだって配信やってることに事務所が噛んでるのはさすがに知ってる。
そこで事件が起き(たっぽい感じ)ればさすがに何かしら事務所も動きは起こすし、画面にヒントを出してファンに探してね、なんてやればそれは何かしらのプロモーションだし事務所や運営の責任って察知するのは、幾らファンがアホでもたどり着くはずなんですが、作中のファンは直情的なのか(藁人形なのか)何の疑いもなく個人を責めるし炎上騒ぎに乗っかってしまう。
個人が配信やってるし事務所は噛んでないと信じてる、わけなくないです?
インディーのアイドルファンって歴戦の猛者が多くて、種冷めた目線で見てるんで、そこまで盲信しないんですけどね。

この作品って、ネット民のディテールとかアイドルとかはよく描けてるのにファン心理が意外と直情型ばかり。
そんなにピュアかな、アイドルファンって。
そこに引っ掛かりを覚えてしまう。
なぜかアイドルファンはアップデートされない旧来的で紋切り型。
その辺、描き方が浅いのがもったいない。

ネットは匿名なのが当たり前の感覚だとか、GIMP使って画像を加工してたり。
時代背景が今より10年くらい前なのかも知れないですけど、ミステリ部分とかファン心理とか、ちょっと薄いなーという感じがあってそこが惜しかった。
面白い目論見だっただけに少し残念。

久々にメフィスト賞っぽい作品だなーという。
そんな感じでした。