ヌルい観客が日本映画をダメにしている&MORE

「パラサイト」のオスカー受賞で「日本映画と韓国映画がどうしてこんなに差がついたのか?」なんて今更話題になってますが、随分前からとっくに引き離されてた事実を今更、形として見せつけられたってだけですよね。
日本では「新しき世界」も「チェイサー」も作れなかった。
「悪魔を見た」も「殺人の追憶」を超える作品を作れない。

もうずっと日本映画は突然変異みたいな単発ヒットと定番以外何もないのに、がっかりする資格すらあるのかって感じですが。
いくつか以下に考えてみる。
※思いつくまま書いているので長いです。



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チケット価格

まず韓国は、映画を産業として保護してる。
韓国のエンタメは国策ですから。
スクリーンクォータ制度で保護しつつ、海外からも金を集める。

そして韓国映画は入観料が安い。
700ウォンから11,000ウォン。
(1ウォン=0.093円、2月16日 1:16 UTC
日本だと1,800円。
日韓の収入差を考えてもほぼ二倍近い差があるんですから。
そりゃあ1000円しないなら隙間時間に映画行こうって気にもなる。

日本だって安けりゃもっと映画行くと思うんですけどね。
この前、パラサイト観に行ったときも平日昼の回なのにレディースデイにぶつかって奥様の団体で満員。

映画館は安くして動員をあげるより一人頭の単価を上げるために豪華なプレミアムシートやカップルシート、寝転びながら見れる席を導入したり、シネマイレージみたいに一定の固定客を囲い込んだりもしていますが、なかなか厳しいのが現状。
結局、コンテンツ次第。

韓国って仮想敵がいるから映画を作りやすいと言うのもある。
日本だとスパイとか描いた途端に安っぽくなりがちですが、韓国だとお隣がまさにそう言う国ですから。
だから日本で本格アクションみたいなのは結構つらい。

原作

韓国映画 - Wikipedia
日本歴代興行収入上位の映画一覧 - Wikipedia
簡単にWikipediaをソースにしますが、韓国映画で観客動員が1000万人以上は19本。
しかも2003〜2019年の間でですよ。
一人頭のチケ代が安くても動員が多いのでペイできる。

一方、日本映画で動員1,000万人以上となるとほとんどがアニメ。
中で実写となると
明治天皇と日露大戦争
東京オリンピック
踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」
キングコング対ゴジラ
の四本。
2000年代の作品は1本...。
しかもジブリなんて毎年夏にテレビで擦りまくり。
未だにバルス祭りなんて起きてるわけですから、そりゃあ第二の宮崎駿頼り。

そして日本だけに言えることではないですけど、オリジナルコンテンツが少ない。
アニメにしろテレビアニメ〇〇の映画版、人気マンガ〇〇の映画版。
人気小説〇〇の映画版とかそーいうのはつまり安定して固定客がいるので出資されやすい。
どうなるかもわからない作品に対して出資、となると回収できるかどうかも怪しい。
だから安定してる既存作品の映像化ばかりになる。

ただハリウッドもアメコミで回収できるとなったら途端にアメコミ一辺倒。
「バードマン」でのマイケル・キートンの顛末は、まさにアメコミ映画ブームの栄枯盛衰に翻弄されたからこそ。
azanaerunawano5to4.hatenablog.com

一方で、恋愛映画となるとオリジナルが多いのは、当然イケメン役者で呼べるからでしょうね。
映画館冒頭で延々流れる予告の中でも苦笑するしかないような、学校を舞台にした甘ったるいコテコテの恋愛映画とか、愛と感動を押し付けるような文芸作品の予告が流れて「誰が観に行くねん」とか思うんですが、あれこそ予算もかけずに固定客がいて、それなりに収益が上げられるからずっと作られ続ける。
愛とか感動ってのは、観客が感じるものなのに「これ愛で感動する作品ですよ!」ってパッケージされて出されてもがっかりなんで...。
...あとは後述。

非言語

リンダ リンダ リンダ

この手の話になるといつも思い出すんですけど、山下敦弘の「リンダリンダリンダ」って映画は感想の多くで『間延びしている』って言われるんですよ。
でも実際はそのカット割とかレイアウトで暗喩的に人物の関係性とか距離感を表現している。
『間延びしている』と言われるその場面の情報量は以上に多い。
ただセリフが少ない。
セリフにしていない、言語化しないで言語化してしまうと陳腐になるようなことを表現してる。

言葉にしないと理解できない=何もない=間延びしてる、になってしまう。

例えば最初は名字にさん付けで「〇〇さん」だったのが、下の名前で「XX」って呼べば安易に関係性の変化を表現できる。
でもそれって安易な表現方法で、分かりやすいが分かり易すぎる。

菊地成孔氏が以前、日本ドラマの空洞について語ってたんですけども、

菊地成孔)中心が空虚じゃなきゃ、ダメなのよ。だから『恋仲』みたいなドラマとかね。言ってもわからないと思いますけど。画面の中で誰も演技していないっていう(笑)。あの・・・(笑)。

(韓東賢)すんごい見てみたくなりますね。

菊地成孔)いや、ヤバいっすよ、あれは。まあ、あれこそ日本。ジャパンクールだかクールジャパンだかですけど。だから、韓流ドラマは画面の中のカロリーがもう、すんごいもん。脚本もすごいし、演技も何から何まですごいんだけど。

(韓東賢)映画もそうですよね。

菊地成孔)うん。『恋仲』、画面に何も映ってないですからね。

(韓東賢・ヴィヴィアン)(笑)

菊地成孔)人気ある人がただ右往左往してるだけ。

(韓東賢)コンテンポラリーアートですよね。

菊地成孔)本当。まったく。で、画面の外にあるインターテクスチャリティーだけの価値で見てるの。みんな。だからその、そういう意味で日本はアイドルカルチャーが根付くのには本当にいい国。
菊地成孔 ドラマ『恋仲』と日韓ドラマの違いを語る

日本のドラマが安易な構造で作品を作り、観客はそれに慣らされる。
ヌルい作品にならされヌルい観客が育成される。
マーケットがヌルいんですから、供給する作品も当然ヌルくなきゃならない。
観客が映像から受け取る情報のスキルが低いなら、作る側もそれに合わせて作らなきゃあならない。

日本の観客というのは、多くが言語化しないと理解できない。
空虚で安易なコンテンツに慣らされている以上、わかりやすくなければそもそも理解が難しい。
小説なら行間を読むとか言いますが、映画だってセリフとセリフの間を読まなきゃならない。
でもそこに綺麗な音楽さえ流しときゃ画がなんとかなってしまう作品って、そこに意味より感覚しかない。

ちゃんと読むってのは難易度も必要だし体力だって必要。
全部わかりやすく書いてある方が簡単だし楽なんですよ。
バラエティ番組が字幕だらけになったのだってわかりやすくするためだし、誘い笑いを入れ込んだのも『ここで笑うところですよ』って明示するため。

食べやすく、柔らかく。
でもそんなものばっかり食べてたら顎の筋肉だって弱る。

ハリウッド映画は上手いんですよ。
あっちはローコンテクスト文化だから言語化表現が多いのに、作家性のあるようなハイコンテクストな暗喩の部分もちゃんと残ってる。
だから世界をマーケットに勝負できる。
日本はハイコンテクストな(役者の人気とかが前提の)作品ばかり。
だからコンテクスト抜きだと途端に勝負できなくなる。

壁ドンなんて日本独自ですよね、あれこそ空洞じゃないかっていう。
あの暴力的な挙動というかマゾヒスティックなフェティシズムに恋なんて感情を歪んで当てはめて流行らせてんですから。
この空虚こそが多くの日本映画にも通じる本質。

いつも思うんですけど、ドラマにしろ映画にしろ真っ先に出てくるのが役者の情報ばかり。
監督とか演出の名前って調べないと出てなかったりするのって何なんですかね。
誰が出てるかじゃなく誰が撮ったかを知りたいんですが。

映画館


『1917 命をかけた伝令』予告

日本の映画って「映画館で観る必要性」がないものが多すぎる。
今で言うなら「1917」のワンカット撮影なんて映画館で見ないとあの感覚がわからなさそうなんですよ。
シン・ゴジラ」は珍しく映画館で見るべき映画でしたけどね。
ドラマの延長みたいな作品って、わざわざ映画館で見るよりテレビの放映待ってりゃいずれやるんですから。

その後のビデオでの販売での回収考えて作れば小粒になるのは当然。
映画館ではダメでも、コンテンツをレンタルやテレビ放映で回収、っていうVシネマチックなビジネスモデルが映画をどれも小ぶりにしてしまった背景にあるような気もする。

映画ポスターの話

togetter.com
最近、日本の映画ポスターは字が多すぎてダサいと話題ですが。
これにしろ言語非言語という部分も大きい。

以前にも話題になったことあるんですが、その時のトップコメント。

日本の映画ポスターは何故ダサいのか - Togetter

予備知識0で3枚のポスター見て、3枚目で初めて「誰が監督か」「何をする映画か」がやっと分った私には「ダサい」と一刀両断できない/英語圏ならともかく、非英語圏で洋画のポスターがこうなるのは仕方ないよ

2015/12/28 02:38
b.hatena.ne.jp
このコメントに集約されてると思うんですけど、そもそも映画の宣伝にポスターだけで完結する必要なんてないんですよ。

「誰が監督か」「何をする映画か」がやっと分った

それって映画の詳細を知るために必要なものであって、映画の存在を認識するために必要な情報じゃない。

日本の映画のポスターというのは、映画の情報が多すぎる。
映画のポスター単体の情報だけで映画を観に行くような人なら、そもそもそんなに情報がなくたって観に行く。
でも映画を観に行かない人はポスターに何が書いてあっても読まないし観に行かない。

ポスターに求めるのが宣伝広告なのか、それともイメージの補強なのか。
日本映画は前者で海外は後者、と考えればあの楽天みたいなダサデザインの理由も理解できる気がする。

ミッドソマー



いよいよ公開の迫ったミッドソマーですけど、ひぐちゆうこに依頼したポスターはとても素晴らしい。

「誰が監督か」「何をする映画か」が解る必要はない。
作品の雰囲気だけ伝われば成功、そう言う意図がちゃんと感じられるし、そもそもネタバレも禁止作品なので丁度いい。
これがメインのポスターならさらに良かったんですけどね...。


販促となるとこっちになるのは仕方ないか。
個人的には、週プレのグラビアポエムみたいな一言って必要ないと思うんですけど。

オススメ韓国映画

Twitterで「日本もこの映画が面白いのに!」って言ってる人もいますけど、それって「今の日本映画は素晴らしい」を補強できるものじゃないですよ。
スポーツだって選手個人の素晴らしさとリーグ全体の盛り上がりは別の話ですよ?

日本映画が終わったわけでもないし、まずそのためにはいろいろ根本から見直さなきゃならない気もしますけど。
ジャパンクールだかなんだか知りませんけど、視聴率とか興行収入とか別としてコンテンツのクオリティを高めてから売って出りゃいいのに、アニメが海外に受けるからアニメがジャパンクールだとか本末転倒もすぎる。
映像コンテンツだって日本の経済を支える主幹産業になる可能性がある、ってことが本気で認識されなきゃまずはダメなんじゃないかと。
空洞な日本エンタメで夜明けは遠そう...。

では最後にオススメ韓国映画でも挙げておきますね。

新しき世界

新しき世界(字幕版)

新しき世界(字幕版)

  • 発売日: 2014/08/13
  • メディア: Prime Video
近年の韓国映画を語るなら外せないのが「新しき世界」
もう何回もオススメしまくってますがもう一回。
まだこれを超える韓国作品はないと思ってる(あくまで個人的に)。

チェイサー

チェイサー(字幕版)

チェイサー(字幕版)

  • メディア: Prime Video
「チェイサー」も定番ですが、これも外せない。
同監督の「哀しき獣」も面白いのでこちらが好きなら続けて観るのもアリ。

殺人の追憶

殺人の追憶(字幕版)

殺人の追憶(字幕版)

  • 発売日: 2014/06/07
  • メディア: Prime Video
「パラサイト」でオスカーを獲ったポン・ジュノですが、正直「殺人の追憶」の方が好きだったり。
あの不穏な感じとか、汚さとか。
日本ってなんで汚いものも小綺麗に描くようになったんでしょうね。

アシュラ

アシュラ(字幕版)

アシュラ(字幕版)

  • メディア: Prime Video
韓国映画って暴力的な描写が多いとか言われますが、この「アシュラ」くらいまでくるとこの悪徳警官がどこまでやるのか?って見入ってしまうんですよね。
個人的には車で突っ込むとこが好きです。

コインロッカーの女

コインロッカーの女 [DVD]

コインロッカーの女 [DVD]

  • 出版社/メーカー: アルバトロス
  • 発売日: 2016/04/02
  • メディア: DVD
キム・ゴウン好きなんですよね。
トッケビも観てましたが、なんか可愛くないのに可愛いっていう。
死体死体死体。

アジョシ

アジョシ(字幕版)

アジョシ(字幕版)

  • 発売日: 2015/03/15
  • メディア: Prime Video
アクション映画だと「アジョシ」がすごすぎ。
ウォンビンはイケメンだけじゃなく、アクションもがっつりこなしてる。
これを超える作品はかなり難しい。

お嬢さん

お嬢さん(字幕版)

お嬢さん(字幕版)

  • 発売日: 2017/08/21
  • メディア: Prime Video
オールドボーイ」のパク・チャヌク監督が撮った「お嬢さん」
変てこな日本語がモゾモゾしてしまうんですが、なんだかクセになる不思議な一本。
サラ・ウォーターズからは原作表記NGになったらしいですが、高村薫の逆鱗に触れた「マークスの山」とは逆で、作品を評価した上でオチも改変されてるので原作と書かないでと言う話になったらしい。
キム・テリってなんとなく小島瑠璃子似て蝶

こんな記事書いてたら韓国映画観たくなってきた。
以上、ご査収お願いいたします。