コロナで映画館上映が見送られたのは吉か凶か 映画「グレイハウンド」


トム・ハンクス脚本・主演!映画「グレイハウンド(原題)」US版予告編 ~第2次世界大戦時の戦艦が舞台

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とりあえずファウンデーションが始まるまでは、看板タイトルもないのでコロナで劇場放映がスルーされた「グレイハウンド」を観てみた次第。

トム・ハンクス脚本、主演。
第二次大戦中、リバプールへ向かう商船と護送船団、そこへ襲い掛かるUボートとの戦いを描く。

潜水艦VS駆逐艦と言えば真っ先に「眼下の敵」が思い浮かぶ。
駆逐艦の艦長を演じるロバート・ミッチャムUボートの艦長クルト・ユルゲンスの駆け引きも面白い名作だが、今作はそれとはちょっと違う。
以下、ネタバレなしで。



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新人揃い

トム・ハンクス演じるアメリカ海軍のアーネスト・クラウス艦長はこれまで大西洋横断する護衛任務の経験がない。
初航海で与えられたハードワーク。
一緒に乗り込むのも新兵が多く、まだまだ未熟さが目立つ。

しかしそれは艦長も同じ。
だから初のUボート戦では、艦長の緊張感もすごい。
威厳を見せなければならない、まだまだ新兵らの信用も勝ち取っていない。

艦長は指示をし、選択し、その結果がどうあれ、どれだけの船が沈み、人が死んでも、それは艦長の責任。
Uボートを沈没させれば艦長の手柄、しかし商船が沈み、また護衛艦が沈めば艦長の失態。
護衛艦として商船を守るか、沈没しつつある船の乗員を救うか。
新兵は全体を見ていないし、身勝手に進言するが、別にその結果の責任を取るわけじゃあない。

初戦はUボートの攻撃を交わすも、予想を超えるほどのUボートの集団に襲われ各個撃破されていく船団。
その中で、艦長の選択が運命を決めていく。

今と違って全て人力であるところも面白い。
連絡は人づたえ。
艦長は艦首を走り回り、目視で捉え、指示を与え、また兵士の伝言ゲームで各所へと指示が伝えられる。
魚雷ギリギリの操監も全てそのラグ込み。

ホラー映画

今作は、戦争ものとしてはかなり異色。

戦争というのは、基本的に敵と味方であって善と悪ではない。
国同士の都合やイデオロギーがあり、その解決手段として暴力が選ばれる結果として戦争が行われる。

だからアニメ「機動戦士ガンダム」で主人公アムロ・レイに殺される兵士の姿が描かれたり、その兵が母を呼びながら死んでいくのも善悪ではないからこそ織り込まれる描写。
前述した「眼下の敵」でもロバート・ミッチャムクルト・ユルゲンスは歴戦の勇士として敵対しながらもお互いに敬意がある。
狡猾な二人の職業軍人が、お互いの裏をかき、命をかけて戦いを繰り広げる。
そこに作品の魅力がある。

しかし今作ではUボート側の乗員がほとんど登場しない。
登場するのはUボートが浮上し、駆逐艦を戦場から攻撃してくるところだけ。
あとは「グレイウルフ」を自称するUボートの艦長が無線に割り込んでくるシーンだけ。
こういう構造は、Uボートに人間味を感じさせない。

毎日「お前たちを一人一人殺してやる」という声が聞こえ、夜になると次々犠牲者が出る。
構造だけならホラー映画と変わらない。
人間と人間ではなく、力量差のあるハンターと羊、殺人鬼と犠牲者。
トム・ハンクス演じる新人艦長、駆逐艦乗員も新兵だからこそ、歴戦を生き抜き数に任せ商船団に襲いかかるUボート群を恐ろしいハンターとして描いたのかもしれない。

Uボートだって乗っているのは人間。
別にドイツ軍が全員、悪党で悪魔では無い。

映画「Uボート」でひたすら描かれる人間性
Uボートの乗員だって怖いし、息苦しい密閉空間の中、地獄のような戦争を生き抜こうとしている。
今作と真逆とも言えるかも知れない。

人間が描けていない

今作、人物描写が薄いのも気になった。
人物描写というのは基本的に犠牲者に対して描かれるもの。

死亡フラグとしてよく
「俺、この戦争生き残ったら結婚するんだ」と言った奴は死ぬ
というのがあるが、あれも「キャラクターの未来を描くというのはその未来がないからこそ」だからと言える。

今作は駆逐艦の上の物語であり、陸戦と違って犠牲者が限られる。
激戦の最中、船が沈み、乗員の半分が死ぬような話ならある程度兵士の人間性を描き観客の感情移入を誘う手もあるが、今作はあくまで艦長が中心の話となっている今作。
必然的に艦長の感情を担う担当は(以下、ネタバレのため省略)
だからこそ彼が死ぬのも必然。

そして人物が描かれないなら、名のある兵の人死も少ないのも必然。
お涙頂戴の人間ドラマを廃し、その分、スピード感や戦闘のディテールに時間を割いている。

だからこそAPPLE TVなのはもったいないとも言える。
「感動の超大作!」ではないが、戦闘のヒリヒリする感じや、次々襲いかかってくるUボート、徐々に爆雷が尽き、船が減っていく恐怖感も充分。
大きなスクリーンで見ればまた印象が違ったろう。

とは言え劇場公開していても大ヒットしていたとは思えず、APPLE TV+だからこそ多くに見られた作品とも言える。
APPLE TV+独占で放映されている現状、PCモニターやタブレット、テレビの小さなスクリーンで見るならもっと人間味があった方が良かったかもしれない。