日本のヒップホップのアングライメージが変わるわけない


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蟹江さんの新作"Donda"聴きました?
色々問題児ですけど、出してくる楽曲はやっぱり素晴らしいので結局、また次にも(ヘンテコ発言&ファッションには目を瞑り)期待してしまうという。
※アルバム"Donda"のジャケットが真っ黒なので上記サムネは正常です

二度目のワクチンで発熱してる中、蟹江聴きつつこれを書いております(寝ろよ)。

※ちなみにラップとヒップホップの関係性は、ヒップホップ(文化)>ラップ(歌唱)ですので、以下お間違えなきよう

”本物のヒップホップシーンはアングラ”という勘違い

news.yahoo.co.jp

#NAMIMONOGATARIでネットが盛り上がっておりますが、上記記事みたいな意見がありまして。
日本のヒップホップはアングラ(悪そうな奴は〜)のイメージ。
それをせっかくCREEPYNUTSやヒプマイが変えようとしていたのに、その努力が水の泡に...という意見。

しかしそれに対して、


みたいな意見が当然出る。
リアルなヒップホップ=アングラこそが王道だし、メジャーで日和った商業主義ラップなんて軟弱。


でも日本語ラップの歴史を辿ると今こういうアングラな「本物のヒップホップ」みたいなイメージってあくまで後付けであって、今とは違っていたはずなんですよ。
濃いラップファンほど「アングラが王道でメジャーは邪道」みたいなことを言いたがりますが。

宇多丸氏がラジオで語ってる書き起こしがあったので引用しますが、

miyearnzzlabo.com

宇多丸)これ、松永接待です。ええと、まず第1世代が言わずもがな、いとうせいこうさん、タイニーパンクス。あと、別の場所にはいたけどCRAZY-Aさんとかそういうあたりだということにしてください。DJ YUTAKAさんとか近田春夫さんとか。それを第1として。で、そこに影響を受けて……だから85年からこれ、ここはすごく短くて。87年ぐらいまでがこの第1で。87年ぐらいから始まる、そこの活動に影響を受けて始めた……つまり、ここから先は要するにヒップホップからキャリアを始めた人たち。だからその第2世代なんだけど、第2世代の始まりを告げるのがECDだと思ってください。

これを見るとわかるんですけど日本語ラップの黎明期っていうのはサブカル発信なんですよね。
文化系ヒップホップカルチャー、ラップが日本で登場する。

ヒップホップカルチャーはいきなりアングラだった、なんてのは勘違いでしかない。
アメリカのラップは、黒人文化から白人文化への「ドロップイン」でしたけど、初期の日本のラップはあくまで文化人がアメリカから取り込んだ新しいシーンであって、そういうドロップインするような土壌はなかった。
その辺の「ドロップイン」は、横浜銀蝿やキャロルみたいなヤンキーイズム横溢するロックが占めてた。
この辺、矢沢永吉の影響が凄まじいんですけどね。

89年というとN.W.A.がデトロイトで勾留されたりしてた時代。
90年にMCハマーが日本でも流行。

宇多丸)で、ECDスチャダラパー、それからRHYMESTERも完全にここの第2世代っていうことですね。EAST ENDYOU THE ROCK★MUROくんとTWIGYというあたりが第2世代。で、だから要するにその最初のファーストインパクトに影響を受けて始めた純ラッパー、純ヒップホップグループが第2世代。

(DJ松永)それが第2世代なんですね。

宇多丸)で、第3世代の登場……要するに第2と第3の間。「ここで変わる!」っていうのが、僕は何度も言っていますがMICROPHONE PAGER。第2世代だったMUROくんとTWIGYが始めたペイジャーが第3世代を呼ぶんですね。

(DJ松永)へー!

宇多丸)だから雷とかは第3世代。

(DJ松永)そうか。雷は第3か。

宇多丸)で、年齢とかで言うと同じぐらいなんだけど、キングギドラBUDDHA BRANDは僕のこのカテゴライズで言うと第3世代に入ります。

DA.YO.NEのヒットが94年、ミクスチャーのGrateful Daysが99年。

そして2000年代。
KREVAがMCバトルで連勝、KICK THE CAN CREWのデビューは01年。
ORANGE RANGEのデビューが03年。

チャラいけどポップで聴きやすい。
ラップ=アングラみたいなイメージが濃くなっているところへ、メジャーシーンでも受ける楽曲が登場して、アングラとメジャーが乖離していく。
アングラの深化っていうんですかね。
「本物のラップ」みたいな虚構がどんどん構築されていく。
「本物」って何を基準とした「本物」なんだかよくわかりませんが。

こういうのって別にラップに限らず、ロックにだってある流れで「売れ線=大衆迎合」でバカにする、みたいな浅薄な思い込みは存在したし、今もしてる。
筋肉少女帯、というか大槻ケンヂはその辺をぶっちゃけて、「ロックなんてポリシー守ってても飯は食えないし、彼女にプレゼントを買ってあげたい」っていう「タイアップ」って曲を作るわけですが。

(DJ松永)なるほど。俺はちなみに原体験、リアルタイムで言うと第5世代でしたね。でも、結局一番最初に聞いていたのは第2、第3なんですよ。年代的には第5の世代なんですが。なんだろう? たまたま本当にRHYMESTERとかギドラとかから入ったので。第2、第3を見て入ったんですが、俺以外のやつはみんな第5を聞いてたんですよ。MSCとか。

宇多丸)おっしゃる通り。だからまさにたとえば2004年、2005年ぐらいはやっぱりこのへんだよね。MSCとか。

(DJ松永)でも本当にそれこそアングラ化がすごい進んでいた時代じゃないですか。

宇多丸)そうだね。だから実はその第5から先は、メジャーディールっていうのがそんなに価値を持たなくなってきて……っていう時代でもあって。昔みたいな、まあ音楽業界全体の変化もあって。割とみんなインディペンデントで回していくっていうスタンスが主流になったのが第5、第6。なんだけど、やっぱりフリースタイルダンジョンという一大、もうビッグメディアで。やっぱりあれが大きかったから、第7はちょっとやっぱり華やかになってきてますね。

(DJ松永)そうですね。だって本当に、ヒップホップがメジャーだなんて想像がつかなくて。それで昔の音源を掘っていくと「あれ? さんぴん世代の人ってみんなメジャーから出してるんだ。ええっ? 時代が……?」みたいな。

 
 
 

Zebbraという日本語ラップの功労者

Creepyがラップのイメージを変えようとした、かどうかはさておき、その以前に変えようとしていたのがZebbraだったし、その現れがフリースタイルダンジョン(以下、FSD)だったのは間違いない。

Zeebra 「ラップ」というものが何なのか、それがやっとこの番組で伝わったかなと思ってます。EAST END×YURIの『DA.YO.NE』とか、90年代半ばから2000年代初頭にかけていろんな曲がヒットしたけど、じゃあどれだけヒップホップのことを皆が理解しているかというと、すごく表層的なものだったんだよね。一般の人からみれば、「ダボダボの服を着てチェケラッチョ言ってる人」、くらいな感じだったと思う。

 でも『ダンジョン』でラップの基礎的なスキルである「韻を踏む」という作業がどれだけクリエイティブなものかということを示せたおかげで、「ラップってYO YO言ってるだけじゃなかったんだ!」とわかってもらえた。バカじゃラップできないんだよ、というのが伝わったのは収穫でした(笑)。

(中略)

 僕としては90年代に今くらいシーンを成熟させておきたかったんですけど、なかなかそうならなかったのは、テレビ局や会社の“上の人”の理解がなかったからだよね。これはもうヒップホップに限らずエンタメ全般に言えるんだろうけど。でもそうやって脈々と世代をまたいでヒップホップが伝播していくことを、実はずーーっと考えてた。というか極論、僕がラッパーになったのもそのためなんですよ。

「バカじゃラップできないと伝わった」 Zeebraが語る『フリースタイルダンジョン』5年の“収穫” | 文春オンライン

Zeebraってのは少なくともアングラなままのシーンでは頭打ちになるってことを考えて、シーンの盛り上がりとか広がりを考えて動いていた。
だから今回のツイートみたいに

ヒップホップシーンを牽引する

なんて発言に繋がる。

ジブさんは根っこが真面目ですからね。
不倫もするけど。
そうでなければ自分のチャンネルでラップ講座なんてやらないですよ。

アングラじゃなく明るく、少しでも入りやすいイメージをつけたい。
そうすることで裾野が広がるし、そこからギャングスタラップ、アングラの方に入っていくのだっていい。
ともかく入口は広げなきゃ、古参ファンが「ヒップホップっていうのは〜」「あんなのはヒップホップじゃない」なんて語るだけのジャンルは先細りして廃るだけ。



FSDはいわゆるプロレスなんですよ。
それぞれのラッパーが「モンスター」を名乗り、それらをラップで倒すことで「ラスボス」と戦う。
モンスターにはそれなりのスキルも権威も必要であり、特にラスボスには卓越した存在感も必要になる。
キャラをつけ、ラップバトルという明確に勝ち負けがつく形式にすることで、わかりやすく視聴者に訴える。

こういうプロレスにも使われるわかりやすいラッパーのキャラ付けはイメージ戦略として成功したし、出演者に色々問題が起きなければもっとメジャーになり得たかも知れなかった。

そしてFSDの影響は大きく、この辺りでタレントとしてR-指定とDJ松永のCREEPYNUTSがどんどんメジャーになっていくことになる。
本人らはアングラなヒップホップに憧れていたんだろうけど、結果として日本語ラップ、ヒップホップシーンのイメージ転換に重要なキャストになってしまった。

ヒプマイだってアニメ切っ掛けでアニメ大好き女子らがラップを聴き始め、バスタ・ライムスに辿り着いてどハマりする可能性だってあるわけですよ。
入り口がどうであれ門戸は広く、そして寛容に受け入れるシーンでなければ市場が広がっていかない。
 
 

アングラ上等

しかし、ここへ来て、MURVSAKIの事件とNAMIMONOGATARIによってそんなイメージが泥沼に叩き落とされることになる。
「刺青入れまくって葉っぱ吸ってるウェイ系の民度の低い連中が聞いてる低俗な音楽なんて、倫理観の欠片もない」
そういうイメージが一気に流れ始めた。
※幾つかのコメントを一行に要約しました

アングラ嗜好のファンらからすれば、世間の声なんてどーでもいいし、「騒ぎすぎ」とか思っているだろうが、そういう姿勢こそが、アングラなまま先細りするしかない内向きなムラ思考そのもの。

先日、フジロックが批判受けてましたけど、フジって過去からゴミ問題への取り組みが長く、ゴミ袋を入り口で配り、分別のボランティアをお客さんから募集したり色々やってたおかげで(今年は客少なく)ほんとゴミに関してはかなりクリーンな状況だったらしい。

NAMIMONOGATARIの観客って、マスク以前にゴミ袋にゴミを捨てるって脳すらないんですかね。
運営云々以前に、いい年した連中がマジでこの程度のこともできないんですから。
アングラ上等はいいですけど、やりたいなら自分らでケツ拭けばいいのに。

別にいかついお兄さんらが、これまで通りのアングラで怖いラップを売りにしたってそれはそれでいいと思うんですよ。
「Creepyごときにイメージ変えられてたまるか」って人はそりゃあいるでしょう。
そういうアングライメージを嗜好する客層は一定層いる。
アングラでも一部はバイトなしでもそれなりに食ってもいけますからね。


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みんなが食えるようになったら狐火だってリリックに困ってしまう。
食っていけないからって色々手を出して捕まってもそれはそれ。

今回の件で一番ダメージ受けてるのは、CreepyよりZebbraだと思うんですよね。。。
孤軍奮闘、アングラからは日和ったと批判され、メジャーに魂を売っているように見えてもそれなりにシーンのことを考えて動いているのは間違いなかったわけですから。
フジで吠えてたBOSSだってガッカリしてるでしょうけど。

個人的には偽物も本物もどうでもいいです。
気に入った曲を聞くだけですし、アングラシーンが先細ろうがそれこそ知ったこっちゃあない。
ただね、現状見てると日本のヒップホップシーンの変革なんて、とてもじゃないが無理ですよ。
フェスの惨状見れば一目瞭然。
土壌が整ってない、プレイヤーも市場も運営側の意識もあまりに未熟すぎる。

ヒップホップで生きる人は、この現状からどうしていくつもりなんですかね。
どうせ変わらないでしょうが、たまに遠くから見ております。

では、おやすみなさい(熱上がってきた...)。