パクリと著作権と

anond.hatelabo.jp

古塔つみさんの話に始まり、なんか延焼してますね。
パクリ=悪みたいな浅薄というかなんというか。

こういう意見も出るだろうなーと思ってましたが。
自分はこの「パクリ」って言葉が昔から嫌いでして、できれば使いたくない。
だから前記事もパクリはどーでもよくて「引用、オマージュ、再構築」という言葉が使われたので、それに対して「その言葉を使うのは、いかがなものか?」と書いたんですよ。

ジョジョハンターハンターは昔から続いている権威ある作品で、面白く、人気があるから。

これ以外に答えは無いと思う。
最近の作品やイラストレーターのトレパクは安直で捻りが無く、ジョジョやハンターは先人をリスペクトしたオマージュだから、なんて言うのは大嘘。

仮にジョジョの奇妙な冒険ハンターハンターが今イチからジャンプで連載されて面白い!って話題になっても、トレースだのパクリだのは絶対炎上するよ。
元ネタが週刊少年ジャンプの読者が知らなさそうなマイナーな物から取っている、というのもあると思う。バレないようにこっそりやれ、って事だろうね。
例えば今手塚治虫藤子不二雄があの海外の名作からネタをパクっていた!なんて誰かの目に入っても炎上するとは思わない
何故なら偉大な先人漫画家には「権威」があり、「権威」とは「力」だからだ。要は力がある強い人の不正を糾弾しよう、なんて皆思わない訳ですね
だからまあ、パクリやトレースが叩かれる人は人気や権威が無い人なんだろうな、と思ってる。完全オリジナルで作品を作るクリエイターなんて居ない訳だしね

しょーもない。

この増田のような理屈って、、
何かを真似する→作品としての質が劣る、悪い行為
こういう風にしか考えていない。

ジョジョって滅茶苦茶独特で個性あんなあああーーーって思ってたから、割と元ネタからまんま拝借してるのがショックだった
数年くらいはショックを引き摺っていた気がするけど、それはそれとしてスティール・ボール・ランも読み続けていたしいつしかショックから立ち直っていた気がする
それでもこれを見た後に最近の漫画はパクリがどうの言われてるのを見ると「いやジョジョの方がずっと昔にそのまんまパクってるよ」とは言いたくなる

ナルトの一話でイルカ先生とナルトのエピソードにマジで感動していたのに、
後年読んだうしおととらでほぼ同じ流れのシーンがあってあの感動の名シーンもパクリだったんかい!と本気でショック受けてそれからナルトも読まなくなった気がする

ジョジョなんて登場人物の名前もスタンドの名前も各所から取ってきてるし、ホラーサスペンス映画好きからすれば元ネタなんて自明の理。
荒木飛呂彦の作品は、元ネタありき、何かから元ネタ引っ張ってきてる部分以外がとても独特で個性的なんですよ。
今更バラされてショック受ける、みたいなナイーヴな反応って無意識な「オリジナル信仰」によるんでしょうけど、完全オリジナルって必ず素晴らしいんですか?



こういう理屈で行くと世間の忍者モノは山田風太郎カムイ伝のパクリ。
バイオハザード7は悪魔のいけにえのパクリ。
ウォーキングデッドは映画「ゾンビ」のパクリ。
古畑はコロンボのパクリ。
いやコロンボも叙述推理だからクリスティ、いやコリンズのパクリかも知れない。

刑事コロンボ完全版 1 バリューパック [DVD]

いやはや、模倣とか模写とか翻案とか、この手のことって細かく分かれるんですよ。
でも「パクリ」って言葉は非常に乱暴かつ無責任。
これを平然と迷いなく使う人間とはマトモに話したくない(話せない)んですよね。

ちょっと知財について以下。
とまれ詳しく知りたい方は専門の本でも読むのが一番いいですよ(そっ閉じ推奨)。

著作権

著作権とは、作者が自分の権利の範囲をコントロールできる権利。
なので「パクリ=悪」だと断定できる仕組みではない。
パクられ元の人がどう考えるか、どう対応するか次第でどうとでもなる(Fin)。

もうこれが全て。
さらにいえばアイデアなどは著作権で守られない(なのでお笑い芸人のギャグは著作権の範囲にない)なんてのもある。

そもそもパクったかパクられたかというのは市井の勝手な特定班ではなく、著作権者側が類似点を指摘し、法廷に出て、裁判になり、どれが何箇所類似しているのか、材料を検証し、そこで初めて「パクリか否か」って話になる。
日本は法治国家ですし、そもそも無罪の推定が基本。

パクったと騒ぎゲンナリするのは増田の勝手ですが、現代において過去に類を見ない終始完全なオリジナルのコンテンツがどれだけあるのか?
またオリジナルにどれほどの価値があるのか?

著作権はあくまでも創作物を著作者が自分で守るための権利であって、勝手な自警団が
「◯◯が△△に似ているからアレはパクリだしアウト」
なんて身勝手なゲバ棒振り回すための補強材でもなんでもない。

takizawalaw.com
こちらのリンク先にも色々と詳しい。

例えばウマ娘なんてのは二次創作が山ほど造られ、SNSでも未だ活発に投下されてるわけですが、アレにしろ運営のガイドラインが存在し、それに従う限り問題なく創作することができる。
ウマ娘というアイディアは権利者のものですが、その権利者が「こういうモノであれば二次創作オッケー」と許可を出しているからオッケーなわけですよね。

何でもかんでも「パクリ」なんて乱暴なことを言い出せば、二次創作という行為は全てパクり。
パクリが悪なのなら二次創作は全て悪、全て劣化コピーという認識でいいんですか?

それは、とてもバカバカしい。
そもそもウマ娘というコンテンツ自体、競走馬が元ですし、許可を得ているから作れてる。
悪ならそんなモノ存在すら許されない。

権利者の権利

権利者が許すか否か、怒らないかどうか。
それが大事なのは、ひとえにこれが「著作権者の権利を守る」からに他ならない。

知権はもちろん守られなければならないモノですが、一方でそれによって大多数の創作活動が阻害されてはならないという大原則がある。
仮に文化の発展を阻害する法ならそれこそ害でしかない。

ところで、なぜ、他人の作品を無断で出版したり真似したりすることがいけないのでしょう。
無断利用や盗作は作家の心情として許せないということはもちろんその通りですが、それだけではなく、海賊版や盗作を許していると、創作が細るからです。新しい作品を生み出そうという土壌が育ちません。
改訂版 著作権とは何か 文化と創造のゆくえ (集英社新書)

知的財産権著作権法、そういった法は著作者の創作物を守るとともに、過剰に適用され自由な創作の土壌を痩せさせてしまうことも本来の趣旨に反する。
著作権者が、自身の創造した著作物の権利を守るための仕組みが著作権である、というのはまさにだからこそであって、無関係な第三者がパクリだなんだと騒いで作品を腐すなどというのは本来の趣旨からそもそも外れてるんですよ。


こういう増田を見ていて思うのは
「パクリかそうでないかという前に面白いか面白くなかったのか」
なんですよ。
「面白かったけどパクリだったからショック」だ、なんて意味がわからない。

面白かったんだから作品としての質は変わらない。
パクったかどうかは問題になれば法で判断する部分。
権利者が騒いでいないことを、ただの一読者が騒いで一体何がしたいんだろう?と。

第一条 この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=345AC0000000048

権利の保護、そして文化の発展に寄与すること。

別に著作権に関する諸々を問題提起するのは勝手ですが(内容は雑で乱暴とはいえ)、もう少し著作権という法そのものについて少し考えてみたほうがいいのではないのか、と思う次第ですよ。

あと著作権に関してわかりやすい本の一冊でも読んでから考えてほしいですね。
福井氏の本には、ロミオとジュリエットとウエストサイドストーリー、ライオンキングとジャングル大帝、パロディ作品は著作権違反になるのか、などの話も登場する。

「似ている」というだけで果たして即断されるべきなのか。
具体例がいくつも挙がっていてわかりやすいので一読どうぞ。